女性をんな)” の例文
露ほどの愛情をたぬ女性をんなの生涯、その女性を中心とした一家の運命、見る聞くに如何ばかり吾等若い者の胸を凍らしめて居るであらう。
一家 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
ひだり脇腹わきばらのあたりにすわりました、女性をんなひざは、寢臺ねだいふちと、すれ/\のところに、ちうにふいと浮上うきあがつてるのですよ。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
篠田は首打ち振りぬ「其れが女性をんなの本来でせうか——必竟ひつきやう女性を鬼になしたる社会の罪では無いでせうか」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
だから、女性をんなを食用鷄肉かしわのやうにしか考へることを知らないあはれな男どもには、ちと筋がありすぎて——さうはいふが、娼婦性がすけないだけ、純なる彼女である、男思ひである。
下町娘 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
うです。まあ、君、聞いて呉れ給へ。よく世間には立派な人物だと言はれて居ながら、唯女性をんなといふものにかけて、非常に弱い性質たちの男があるものだね。蓮華寺の住職も矢張やはり其だらうと思ふよ。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
可厭いやで、可厭いやで、可厭いやで。なんとも、ものにたとへやうがなかつたんですが、女性をんなこといて、なにはうとすると、だれにもくちけません。……
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
家庭の歓楽と云ふ如き問題は、最早もはや篠田さんのお心には無いのです、勿論もちろんの様なる荘厳の御精神に感動せざる女性をんなの心が、何処どこにありませう、けれど剛さん
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
カンレイ紗のゆかたの、腰から下は眞赤で、上は白い小さな肌着の透いて見えるので平氣なやうな流行は、おなじ女性をんなには居たたまれない氣持がする。着物が透いてゐても却つて暑苦しい。
夏の女 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
ツの壁越かべごしですが、寢臺ねだいわたしこほりついたやうにつて、じつ其方そのはうますと、きました、たかかべと、天井てんじやう敷合しきあはせのところから、あの、女性をんな
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
兼吉さんと米ちやんとのお話を承はつてる中に、私の心が妙な風に成つて来ましてネ、仮令たとひ女性をんな節操みさをけがしたものでも、其が自分の心から出たのでないならば
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)