地肌じはだ)” の例文
クリスチャンスタッドのあたりの大きなジャガイモばたけ——まだくろぐろと、地肌じはだを見せていました——の上を飛んだとき、ガンたちはさけびました。
溝渠インクラインはさぞ満々たる水をたたえて走っていると思いのほか、なんと一滴の水もなく、カラカラに乾き切って混凝土コンクリートの底は、灰色の地肌じはだを見せているのです。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
孔雀がおしろいを落して黒い地肌じはだを見せるってわけのものだから、これは、カラスとでも改めたらいいんだ。
パンドラの匣 (新字新仮名) / 太宰治(著)
胸を刺されているのだろう。五十前後のデブデブ肥った男だった。土色の頭は、地肌じはだが露出して、絹糸のもつれたような毛が、わずかに残っているにすぎなかった。
女妖:01 前篇 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
冬日の暖くさしこんだ硝子ガラス窓の下に、田鍋たなべ捜査課長の机があった。課長と相対しているのは、長髪のてっぺんから地肌じはだがすこし覗いている中年の長身の紳士だった。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
色白の生まれつきなので、酔えば真っ赤になり、上からみると頭の地肌じはだまで赤くすけて見える。
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
午前中のその時刻の光線の具合ぐあいで、木洩こもがまるで地肌じはだひょうの皮のように美しくしている、その小さな坂を、ややもするとすべりそうな足つきで昇ってゆくその背の高い
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
それは彼女が身を売るまでに、邪慳じゃけん継母ままははとの争いから、すさむままに任せた野性だった。白粉おしろい地肌じはだを隠したように、この数年間の生活が押し隠していた野性だった。………
奇怪な再会 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
兎も角も階下の応接間に通して置いて、大急ぎで鏡台の前にすわったが、あかでよごれた顔の地肌じはだにおしろいをたたき込んで、小ざっぱりした単衣ひとえに着換えて降りて行くまでには
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
伯耆ほうき印賀鉄いんがてつ、これを千草といって第一に推し、つぎに石見いわみの出羽鉄、これを刃に使い、南部のへい鉄、南蛮なんばん鉄などというものもあるが、ねばりが強いので主に地肌じはだにだけ用立てる。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そして、芝草しばくさがたいそううすいために、下の白い石灰質せっかいしつ地肌じはだかがやいてみえました。
そのかげりが現れている期間は、お白粉しろいを濃くすると、斜めに光線を透かした時に、かえって真っ白な地肌じはだの下に鉛色の部分がくっきり沈澱ちんでんして見えるので、むしろその期間はお白粉を薄くして
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
或る小高いおかの頂きにあるお天狗てんぐ様のところまで登ってみようと思って、私は、去年の落葉ですっかり地肌じはだの見えないほど埋まっているやや急な山径やまみちをガサガサと音させながら上って行ったが
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)