土器かはらけ)” の例文
花嫁が土器かはらけを取上げて、銚子の酒を受けてゐる時、正吉は突然父を促すと、スウッと立上つて次の部屋に行つた。
菜の花月夜 (新字旧仮名) / 片岡鉄兵(著)
童児たちは、有仁の語につれて、新な提の中から、芋粥を、土器かはらけに汲まうとする。五位は、両手を蠅でも逐ふやうに動かして、平に、辞退の意を示した。
芋粥 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
元久二年七月廿八日みちより和哥所わかどころまゐる、家隆朝臣かりうあそん唐櫃二合からひつふたつ取寄とりよせらる、○破子わりごうり土器かはらけ酒等さけとうあり
燈明とうみやうけさつしやりませ。洋燈らんぷでは旦那様だんなさま身躰からだあぶないとふで、種油たねあぶらげて、燈心とうしん土器かはらけ用意よういしてめえりやしたよ。追附おつつけ、寝道具ねだうぐはこぶでがすで。しづめてやすまつしやりませ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
一同が順々に京子の脣へ水をつてから、顏へ白い片布きれを掛け、白い屏風を立て廻らして、枕元の小机には、水と鹽と洗米あらひよねとを盛つた土器かはらけを置き、細い燈明の火がチラ/\してゐた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
盡すべしいざ主從の契約けいやく盃盞さかづきつかはさんと云ばこの時かねて用意の三寶さんばう土器かはらけのせ藤井左京持出て天一坊の前に差置さしおけば土器取あげ一こん飮干のみほして伊賀亮へつかはす時に伊賀亮はかしらあげつく/\と天一坊の面貌めんばう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
座敷の床の間へ寄せ、北を枕にして、蓮太郎の死体の上には旅行用の茶色の膝懸ひざかけをかけ、顔は白い帕布ハンケチおほふてあつた。亭主の計らひと見えて、其前に小机を置き、土器かはらけたぐひも新しいのが載せてある。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
この神酒みきは中ほど黒き土器かはらけにとよと注がれていや沁みにけり
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
元久二年七月廿八日みちより和哥所わかどころまゐる、家隆朝臣かりうあそん唐櫃二合からひつふたつ取寄とりよせらる、○破子わりごうり土器かはらけ酒等さけとうあり
幼心に訝りながら、お駒が麩糊ふのりを入れてゐた神饌桶を掃除して、洗米あらひよねを拵へ、鼠糞の溜つてゐた土器かはらけと三寳とを取り出し、總菜の餘りの枯魚ひもの一枚、それから父の飮み餘しの酒を瓶子に移し
父の婚礼 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
中にはどれも芋粥が、あふれんばかりにはいつてゐる。五位は眼をつぶつて、唯でさへ赤い鼻を、一層赤くしながら、提に半分ばかりの芋粥を大きな土器かはらけにすくつて、いやいやながら飲み干した。
芋粥 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)