“嚢(ぶくろ)” の例文
私は、今朝、五時間も歩き回った揚句、空(から)の獲物嚢(ぶくろ)を提げ、頭をうなだれ、重い鉄砲を担(かつ)いで帰って来た。暴風雨(あらし)の来そうな暑さである。
博物誌 (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
戦(いくさ)のあった跡へ行って、死んでいる侍の持っている物——刀だの、笄(こうがい)だの、香(にお)い嚢(ぶくろ)だの、なんでも、お金になる物を剥(は)ぎ取って来るんですよ。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
車中で揺(ゆ)られるたびに、五尺何寸かある大きな胃嚢(ぶくろ)の中(なか)で、腐(くさ)つたものが、波(なみ)を打つ感じがあつた。三時過ぎにぼんやり宅(うち)へ帰(かへ)つた。玄関で門野が
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
うす暗いので、はっきりわからないが、どうやら鼻紙嚢(ぶくろ)から鋏(はさみ)を出して、そのかき乱した鬢(びん)の毛を鋏んででもいるらしい。そこで宗賀(そうが)は、側へよって声をかけた。
忠義 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
すると、その破片は、避難者の乗った気球のガス嚢(ぶくろ)をそのままにはしておかないでしょう。
火星兵団 (新字新仮名) / 海野十三(著)
わずかばかりの金を払って背負い嚢(ぶくろ)に天目(てんもく)の土瓶(どびん)やら、飴色(あめいろ)の「うるか」壺(つぼ)やら、黄色の茶碗やら、緑釉の小壺などを入れて村と別れる。私には大事な宝物である。重くても軽い。
日田の皿山 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
こちらは丸う出直せし旦那の智恵嚢(ぶくろ)、かへつて直接談判で、曖昧の局を結んだ方が、どうやら身腹の痛まぬ訳と、そこは手練の好文句、山鳥の尾のながながしき手紙でのお呼び出しも
今様夫婦気質 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
毛糸の弁当嚢(ぶくろ)を提げて、「福島さん学校へ」と友達に誘はれて小学校へ通つてゐた姪の後姿を毎朝見てゐたのは、ツイ此頃のことのやうに思はれるのに、と、源太郎はまださう思つて
鱧の皮 (新字旧仮名) / 上司小剣(著)
四十二国人物図絵、虞書暦象俗解(ぐしょれきしょうぞくかい)、天文議論、日本水土考、天文和歌注、町人嚢(ぶくろ)、長崎夜話草(やわそう)、水土解弁、ええとそれからまだあったな。万物怪異弁断、華夷通商考、いや全くよく作ったなあ。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
勢いよく吹くのは野分(のわき)の横風……変則の匂(にお)い嚢(ぶくろ)……血腥(ちなまぐさ)い。
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
李儒は、滎陽城(けいようじょう)のうしろの山岳を指さした。彼はいつも董卓の智慧嚢(ぶくろ)だった。彼の口が開くと、董卓はそれだけでも心が休まるふうに見えた。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)