喋舌しやべり)” の例文
猩々はまた黙つて小娘のお喋舌しやべりに耳を傾けてゐたが、暫くすると、娘をいたはるやうに手に持つた食物たべもの破片かけらをそつと呉れてやつた。
何だか、晝狐ひるぎつねにつまゝれたやうな心持、平次はもとより、お喋舌しやべりのガラツ八も、毒氣を拔かれて默り込んで了ひました。
そこで自分じぶんは『對話たいわ』といふことについかんがはじめた、大袈裟おほげさへば『對話哲學たいわてつがくたのを『お喋舌しやべり哲學てつがく』について。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
メァリーは單に面白い話をしてくれたり、私が耽らうとするきび/\した辛辣しんらつなお喋舌しやべりに應じるのが關の山だつた。
火に翳した羽織からは湯氣が立つてゐる。思つたよりは濡れてゐると見えて却々乾せない。好い事にして私は三十分の餘も内儀相手にお喋舌しやべりをしてゐた。
札幌 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
る年の、四月半ばの或る晴れた日、地主宇沢家の邸裏やしきうらの畑地へ二十人ばかりの人足が入りこんで、お喋舌しやべりをしたり鼻唄はなうたを唄つたりしてにぎやかに立働いてゐた。
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
このお喋舌しやべりは、いちいち書き止める必要はあるまい。ただ重要なことは、梨枝子が、中途から、急に浮かぬ表情をして、誰が物を云つてもろくに返事をしなくなつてしまつたことである。
落葉日記 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
喋舌しやべりの多い米国人の娘を相手に毎日教室で文学史を講義しなければならぬとなると、どんな男だつて英語が達者になる訳である。
あのお喋舌しやべりで浮氣つぽくて容貌きりやう自慢で、若旦那とはまるつきりそりの合はないお萬と一緒にされるが嫌で、ツイ自棄やけなことがあつたかも知れないが
火に翳した羽織からは湯気が立つてゐる。思つたよりは濡れてゐると見えて却々なかなか乾せない。い事にして私は三十分の余も内儀相手にお喋舌しやべりをしてゐた。
札幌 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
それはそれとして、今夜の出來事の詳細しやうさいを知つてゐる者が私以外にはあなたきりだつたのは幸ひだつた。あなたはお喋舌しやべりぢやない、これに就いては一言も云はぬことにして下さい。
日本人は地味でぽんほか言分いひぶんはないが、たつた一つ辞世だけは贅沢すぎる。死際にはお喋舌しやべりは要らぬ事だ。狼のやうに黙つて死にたい。
脊の高い無神經な容子をしたイングラム卿は、小さく快活なエミー・イィシュトンの椅子の背中に腕を組んでりかゝつてゐる。彼女は、彼を見上げて、まるで鷦鷯みそさゞいか何ぞのやうにお喋舌しやべりしてゐる。
あまりお喋舌しやべりが過ぎたことに、自分乍ら氣が付いたのでせう。
大学は世間体せけんてい最高学府といふ事にはなつてゐるが、誰一人この女中程上品な口を利かなかつたし、それに揃ひも揃つてお喋舌しやべりが過ぎた。
さしづめ愛国婦人会の会員達は、下らないお喋舌しやべりの会合などはめにして、先づ自分のせがれの歯を掃除してやらなければならない事になる。
成程林檎は沈黙家むつゝりやだが、芸者はよくお喋舌しやべりをする。そして一番悪いのは長次郎氏のやうな人に、よく解らない事を喋舌しやべる事だ。
「天国でお喋舌しやべりが何の役に立つんです。あちらでは唯顔を見てさへれば十分なんですから、言葉に不自由なぞ無い筈です。」
「馬の飼葉かひばに牡蠣をやつてくれ。」——それを聞いたお客達は、今迄話してゐたお喋舌しやべりめて、一斉に此方こちらを振り向いた。
もしか馬が亜米利加の大統領か新聞記者のやうなお喋舌しやべりだつたら、世間は今とはもつと違つたものになるに相違ない。
栖鳳氏はいくらかくすぐつたさうな顔つきをして、それを聴いてゐたが、批評家のお喋舌しやべりがすむと、静かに口を開いた。
二人は外套室クローク・ルウムに外套を置いて、かねて馴染の小ぢんまりした部室へやに入つて往つた。そして香気かをりの高いココアをすゝりながら、好きなお喋舌しやべりに語り耽つた。
喋舌しやべりの好きな男で、どんな腹のいた時でも追悼演説を頼まれると、直ぐ出掛けて往つて、宮川氏のやうに悲しさうなことばを料理場の油虫よりも沢山並べ立てて呉れる。