哀愁あいしう)” の例文
しか勘次かんじ自身じしんには如何どん種類しゆるゐものでも現在げんざいかれこゝろあた滿足まんぞく程度ていどは、うしなうたおしな追憶つゐおくすることからける哀愁あいしうの十ぶんの一にもおよばない。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
お君の氣持にも充分のくつろぎがあつたのでせうが、たいした綺麗といふ程ではないにしても、念入りにこらした花嫁化粧は、半面血潮にまみれて、淺ましくゆがんで見えるのも哀愁あいしうをそゝります。
しかし、さすがにどことなく哀愁あいしうにみちた空氣くうき
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
遠慮ゑんりよ女房等にようばうらにおしなはなしをされるのはいたづらに哀愁あいしうもよほすにぎないのであるが、またぼうにははなしをしてもらひたいやうな心持こゝろもちもしてならぬことがあつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
かれ野田のだけば比較的ひかくてき不自由ふじいうのない生活せいくわつがしてかれるので汝等わつら厄介やくかいにはらねえでもおれはまだたつかれると、うして哀愁あいしうおほはれたこゝろの一ぱうには老人としよりひがみと愚癡ぐちとがおこつたのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)