刎上はねあ)” の例文
それからまたやたらむちで痩馬をひツぱたくがたくり馬車の馭者ぎよしやや、ボロ靴で泥を刎上はねあげて行く一隊の兵卒や、其の兵隊を誘致して行くえらさうな士官や
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
「降って来たもんですから、その何なんですよ、泥でも刎上はねあげちゃあ、そのね、」と今更のように懐をみまわして
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼は杖を持って、いつのまにかその俊敏な身を屋根の上へと刎上はねあげてしまったものと見えます。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
疾風しつぷうごとけてくだん狂人きちがひが、あしからちう飛乘とびのらうとしたれると、づんとつて、屋根やねよりたかく、火山くわざんいはごと刎上はねあげられて、五體ごたいくだいた。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
月が出て時鳥ほととぎすくのを機掛きっかけに、蒲鉾小屋かまぼこごや刎上はねあげて、その浴衣で出ようというもんだな、はははは。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
対手あいての節の隙間を切って、伸縮のびちぢみをめつ、緩めつ、声の重味を刎上はねあげて、咽喉のどの呼吸を突崩す。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と雲の峰の下に、膚脱はだぬぎ裸体はだかの膨れた胸、おおきな乳、ふとったしりを、若い奴が、むちを振って追廻す——爪立つまだつ、走る、の、白の、もも向脛むかはぎを、刎上はねあげ、薙伏なぎふせ、ひしぐばかりに狩立てる。
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)