分疏いひわけ)” の例文
庄兵衞は自分が突然問を發した動機を明して、役目を離れた應對を求める分疏いひわけをしなくてはならぬやうに感じた。そこでかう云つた。
高瀬舟 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
「ちつたあ黴臭かびくさくなつたやうだが、そんでもこのくれえぢや一日いちんちせばくさえななほつから」勘次かんじ分疏いひわけでもするやうにいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
やがて髯の赤い首席の雀部ささべが遅れた分疏いひわけをしながら入つて来た時、校長ももう朝飯が済んだ。
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
この物語にわれは覺えず面をそむけしかば、若者は分疏いひわけらしく詞を添へて、されど新教の女なりき、惡魔の子なりきとつぶやきぬ。われ等二人はしばし語なくして相むかへり。
あれは自分が捜索を為遂げなかつたので、自分で自分に分疏いひわけをしてゐるのだ。併し兎に角己はあの男の繩張内の為事で、あの男に勝つて遣つた。どうもあの男にあの謎が解けなかつたのは無理もない。
庄兵衞は自分が突然問を發した動機を明して、役目を離れた應對を求める分疏いひわけをしなくてはならぬやうに感じた。そこでかう云つた。
高瀬舟 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
「さうだつけかな、それでも唐箕たうみつよてたつもりなんだがなよ、今年ことしあか夥多しつかりだが磨臼するすかたもどういふもんだかわりいんだよ」とおしなすこうごかして分疏いひわけするやうにいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
壽阿彌は此等の人々に一々書を裁するに及ばぬ分疏いひわけに、「府城、沼津、燒津等所々認しよ/\したゝめ候故、自由ながら貴境は先生より御口達奉願候ねがひたてまつりそろ
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
勘次かんじさん與吉よきちことおこしてたとこなんだよ」うち女房にようばう分疏いひわけしてやつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
私は母のお蔭で、東京大学に籍を置くまでになつたが、種々の障礙しやうがいのために半途で退学した。私は今其障礙を数へて、めめしい分疏いひわけをしたくは無い。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
わが見るところを以てすれば、辨難の文はいふもさらなり、批評の文にも權變あるは爭ふべからざることなれども、そを戲文を以て論文に代ふる分疏いひわけにせむはいかゞあるべき。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
大阪天滿てんまの邸には四宮市兵衞が殘つて、豐臣方の奉行等に對して命懸いのちがけ分疏いひわけをした。
栗山大膳 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
「森は実に才子だ。若しあの時お成で道が塞がつて遅れたと云つたら、己はきつとなぜお成の前に出掛けなかつたと云つたに違ない。森は分疏いひわけにならぬ分疏などはしない。実に才子だ」
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)