出会頭であいがしら)” の例文
旧字:出會頭
ドアを開けた出会頭であいがしらに、爺やがそばに、供が続いて突立つったった忘八くつわの紳士が、我がために髪を結って化粧したお澄の姿に、満悦らしい鼻声を出した。
鷭狩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さいわい、門は開けっ放しになっていたので、駈け込んで洋館の入口のベルを押した。と、出会頭であいがしらに、ドアが開いて、一人の洋装婦人が顔を出した。
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
すんでに決死の幕を払って熱風一陣、宮津の家中へ斬り込まんとする出会頭であいがしらへ、白足袋の跣足はだしのまま駈け込んで来た正木作左衛門が大手を拡げて
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
出会頭であいがしらに取って押えてやろうと、ほほえんでいた七兵衛のいる方へは、ちょっと向いたきりで人影は、庭の燈籠とうろうの蔭へ小走りに走って行くと、急に姿が見えなくなりました。
狭い木の階段を這うようにして、広いポーチへ上ると、出会頭であいがしらにギーッと扉が開いて、絞染更紗しぼりぞめさらさの着物をきた、肥った婆さんが顔を出すなり、『こちらへ、どうぞ!』と言った。
おがみたさの心願しんがんほかならならなかったのであるが、きょうもきょうとて浅草あさくさの、このはるんだ志道軒しどうけん小屋前こやまえで、出会頭であいがしらに、ばったりったのが彫工ほりこうまつろう、それとさっしたまつろうから
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
言いながらかかる露地口、出会頭であいがしらに小僧を伴れて息せき切ってくる。
ふたりはマリユスに気づかず、出会頭であいがしらに彼につき当たったのだった。
ひょいと振り向く出会頭であいがしらに、近づいた男の顔が電燈に照らされて、ハッキリ分った。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
年紀とし十七の夏のはじめ、春の名残なごりに降ろうとする大雨の前で、戸外おもて真暗まっくら出会頭であいがしら
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その出会頭であいがしらに、眼をいからし、歯をみ鳴らし、両足を揃えて猛然と備えたムク犬。
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
私達が格子戸を開けて入ろうとすると、出会頭であいがしらに、中から意外な人物が出て来た。私とその男とは、非常な気拙きまずい思いで、ぶつかった目をそらす事も出来ず、暫く無言で睨み合っていた。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
出会頭であいがしらにバッタリと逢ったのは、昨夜柳原の土手で別れたムク犬であります。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
と夢中で言った——処へひょっこり廊下から……脱いだ帽子を手に提げて、夏服の青いので生白なましろい顔を出したのは、その少年で。出会頭であいがしらに聞かされたので、真赤まっかになって逃げたと言います。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いま出会頭であいがしらにお角に突き当った怪しい者でもなく、それとは全く別の人、すなわち、兵馬が吉原の茶屋からこれまで担いで来た神尾主膳が、地上へ差置かれたところで息を吹き返したために
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
足駄穿あしだばき尻端折しりっぱしょりで、出会頭であいがしらに、これはと、頬被ほおかぶりを取った顔を見ると、したり、可心が金沢で見知越みしりごしの、いま尋ねようとして、見合わせた酒造家の、これは兄ごで、見舞に行った帰途かえりだというのです。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もう一つ横町を曲ると一町ばかりで私の家だという、その横町を何気なくヒョイと曲りますと、出会頭であいがしらに一人の男が、何か狼狽している様子で慌ててこちらへやって来るのにバッタリぶつかりました。
赤い部屋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ことにその浪人どものうちの一人は、たしかに芹沢配下の井村に違いないと思われるから、いよいよ以て奇怪に感じてその翌日、隊の門をくぐると、ちょうど出会頭であいがしらのように物置の方から出て来た井村。
上方の御老体が、それなり開けると出会頭であいがしらになります。
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お松が、道庵先生の屋敷の門を出ようとすると出会頭であいがしら
出会頭であいがしらに声をけたものがある。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)