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六月
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ろくぐわつ
と
六月の
日の
照らす
中に、
寢不足の
蒼白い
顏を、
蒸返しにうだらして、
筋もとろけさうに、ふら/\と
邸に
近づく。
六月の午後、人、
藥水を齎し
此の
時間前後の
汽車は、
六月、
七月だと
國府津でもう
明くなる。
八月の
聲を
聞くと
富士驛で、まだ
些と
待たないと、
東の
空がしらまない。
私は
前年、
身延へ
參つたので
知つて
居る。
此は……しかし、
菖蒲、
杜若は——
翌日、
湯の
山の
水を
處々見た、
其處にも、まだ
一輪も
咲かなかつた。
蕾んだのさへない。——
盛は
丁ど
一月おくれる。……
六月の
中旬だらうと
言ふのである。