“光景(けしき)” の例文
成程左様(さう)言はれて見ると、少許(すこし)も人を懼(おそ)れない。白昼(ひるま)ですら出て遊(あす)んで居る。はゝゝゝゝ、寺の内(なか)の光景(けしき)は違つたものだと思つたよ。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
それは、田代の、いまのようにまだ役者にならない時分、聖天町(しょうでんちょう)の油屋の次男坊だったころ毎日のようにながめた光景(けしき)だった。
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
抑(そも/\)われは寄辺(よるべ)ない浮浪学生(ふらうがくしやう)、御主(おんあるじ)の御名(みな)によりて、森(もり)に大路(おほぢ)に、日々(にちにち)の糧(かて)を乞(こ)ひ歩(ある)く難渋(なんじふ)の学徒(がくと)である。おのれ今(いま)、忝(かたじけな)くも尊(たふと)い光景(けしき)を観(み)、幼児(をさなご)の言葉(ことば)を聞(き)いた。
その稜(かど)々は消えてゆく、圓になる、だんだん膨れてきた、こんだは球(きう)だ。この光景(けしき)の神々しさは、先のに、をさをさ劣らない。腕は更に筋張つてさし上げられる。
さしあげた腕 (旧字旧仮名) / レミ・ドゥ・グルモン(著)
町に入ると、常ならぬ花やかな光景(けしき)が、土地慣れぬ吉野の目に珍しく映つた。家々の軒には、怪気(あやしげ)な画や「豊年万作」などの字を書いた古風の行燈(あんどん)や提灯が掲げてある。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
寂(じやく)たるよもの光景(けしき)かな。耀(かゞや)く虚空(こくう)、風絶えて
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
我庵(わがいほ)も亦(ま)た秋の光景(けしき)には洩(もれ)ざりける。
秋窓雑記 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
朦朦と地獄の光景(けしき)
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
そうしてみるともなく外の光景(けしき)……バラックの屋根とラジオのアンテナとの錯綜のかぎりなく打続いた光景……でも、それは
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
跪いてゐる民衆は、今この神々しい光景(けしき)をみて、愛と恩謝とで身を顫はした。恭敬は衆人の胸中にひれ伏し、謙遜は、其體内で、生の破片(こはれ)の中、扁石(ひらいし)の上に身を臥せる。
さしあげた腕 (旧字旧仮名) / レミ・ドゥ・グルモン(著)
寂(じやく)たるよもの光景(けしき)かな。耀く虚空(こくう)、風絶えて
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
その中に帆柱のように林立する煙突の「新しい東京」の進展を物語るいさましい光景(けしき)……「変ったなァ。」と歎息するように三浦はいった。
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
どんな光景(けしき)をもっていたか、口惜しいが、ぼくには、それに似よりの舞台面をさえ目にうかべることができないのである。
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
……そのはかなく素枯れるであろう草のいのちにさえそぞろなおもいをさそわれるのがそのあたりの光景(けしき)の身上だった。
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
やがてもうともりそめるであろう静かな灯影ばかりを偏えにたのんでいるといった光景(けしき)。
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)