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僻目
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ひがめ
ふりがな文庫
“
僻目
(
ひがめ
)” の例文
これを主客顛倒と見るのは始めから自然は客であるべきはずとの
僻目
(
ひがめ
)
から起るのである。——まあこういうのが非難の要点である。
コンラッドの描きたる自然について
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「たしかにこの目が……現在見たこの目が
僻目
(
ひがめ
)
であろうはずはござりませぬが、見届け得なんだこの目は、
浮目
(
うきめ
)
でござりましたか」
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「ほんとさ。お前さん。」お豊は首を長く
延
(
のば
)
して、「私の
僻目
(
ひがめ
)
かも知れないが、実はどうも長吉の様子が心配でならないのさ。」
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「
骸骨
(
がいこつ
)
の上を
粧
(
よそ
)
うて花見かな」(鬼貫)とはいうものの、花見に化粧して行く娘の姿は美しいものです。骸骨のお化けだ、何が美しかろうというのは
僻目
(
ひがめ
)
です。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
「
彼女
(
かれ
)
でのうて誰と見た。三浦の娘などと思うたら大きな
僻目
(
ひがめ
)
じゃ」と、泰親は意味ありげにほほえんだ。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
▼ もっと見る
しかし、そう見えたのは気のせいだったか、
僻目
(
ひがめ
)
だったか、番頭は人のよさそうな顔つきでにこにこしながら退屈男の傍へ近づいて来ると、物軟かに言いました。
旗本退屈男:07 第七話 仙台に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
それを強いて知りたくもない。唯あの二人を並べて見たとき、なんだか夫婦のようだと思ったのが、慥かに己の感情を害した。そう思ったのは、決して
僻目
(
ひがめ
)
ではない。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
それから
僻目
(
ひがめ
)
かも知れないが、先生を訪問しても、先生によっては
閾
(
しきい
)
が高いように思われた。
明治二十四、五年頃の東京文科大学選科
(新字新仮名)
/
西田幾多郎
(著)
僻目
(
ひがめ
)
であろうかと恐れたが、それかといって、その疑を払拭する反証をも捉え得なかった。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
私はかく見るのであるが、これは私一人の
僻目
(
ひがめ
)
であろうか。読者の判断を望むのである。
芸術と数学及び科学
(新字新仮名)
/
三上義夫
(著)
五十川さんなぞはなんでも物を
僻目
(
ひがめ
)
で見るから僕はいやなんです。けれどもあなたは……どうしてあなたはそんな気象でいながらもっと大胆に物を打ち明けてくださらないんです。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
弓引き楯をつらぬる者は誰ぞや! 玉置の荘司殿と見たは
僻目
(
ひがめ
)
か! ……只今ほろぶべき武家に加担し、即時にご運を開かせ給う宮家に、敵対いたす愚かさよ! ……一天下の間いずこのところにか
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
なれる身もなせる心も知られねばおのが
僻目
(
ひがめ
)
を
真
(
ま
)
と思ふらん
礼厳法師歌集
(新字旧仮名)
/
与謝野礼厳
(著)
黒と黄の縞のネクタイ鮮やけき
洒落者
(
みやびをとこ
)
と見しは
僻目
(
ひがめ
)
か
河馬
(旧字旧仮名)
/
中島敦
(著)
「ほんとさ。お
前
(
まへ
)
さん。」お
豊
(
とよ
)
は首を長く
延
(
のば
)
して、「私の
僻目
(
ひがめ
)
かも知れないが、
実
(
じつ
)
はどうも
長吉
(
ちやうきち
)
の
様子
(
やうす
)
が心配でならないのさ。」
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
わたしの
僻目
(
ひがめ
)
というものか知らとまで、自分を疑ってくるようにまでなるのは、ほんとうに自分ながら不思議でなりませんのよ。
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「かわる心と子や思うらん」といいますが、それはつまり子供の
僻目
(
ひがめ
)
です。事実は、父も母も、子のかわいさにおいては、なんら異なっているところはないのです。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
僻目
(
ひがめ
)
でもない。番頭のまなざしのうちにはたしかに鋭い嶮があるのです。咄嗟のうちにそれを看破った主水之介の眼光も恐るべきだが、しかし男はさらに巧みでした。
旗本退屈男:07 第七話 仙台に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
「違やしません。貴方にはただそう見えるだけです。そう見えたって仕方がないが、それは
僻目
(
ひがめ
)
だ」
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
車のぬしを衣笠と見たのは自分の
僻目
(
ひがめ
)
で、彼女はやはり玉藻であったに相違ない。それにしては、わらわに恋するなど及ばぬこと——この一句の意味がよく判らなかった。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
天正十一年に浜松を立ち
退
(
の
)
いた甚五郎が、はたして慶長十二年に朝鮮から
喬僉知
(
きょうせんち
)
と名のって来たか。それともそう見えたのは家康の
僻目
(
ひがめ
)
であったか。確かな事は誰にもわからなんだ。
佐橋甚五郎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
そこで、心を落着けて、よく見るの余裕を得て見ると、右の手に持っていた刀を、単に左に持ち替えたと見たのは
僻目
(
ひがめ
)
でした。
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「
違
(
ちが
)
やしません。
貴方
(
あなた
)
にはたゞ
左様
(
さう
)
見える丈です。
左様
(
さう
)
見
(
み
)
えたつて仕方がないが、それは
僻目
(
ひがめ
)
だ」
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
が、しかしです。「無用の用」こそ「真の用」ではありませんか。理窟と見るは
所詮
(
しょせん
)
僻目
(
ひがめ
)
です。「空」の原理、「不生不滅」の真理、それは偽ることのできない道理です。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
一 文壇の治郎左衛門やはり田舎の人に多きやうなるはわが
僻目
(
ひがめ
)
か。
小説作法
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
江戸の土を踏んだ初めての
見参
(
げんざん
)
なのですが、さすがの白雲も、芸術家並みに頭の古いといわれるのを嫌がって、それでハイカラの傘を仕込んで来たと見るのは
僻目
(
ひがめ
)
で
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「
僻目
(
ひがめ
)
でも何でも
可
(
よ
)
くつてよ」
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
鶏の声が戸の隙から
洩
(
も
)
るるを見て、兵馬は立って、一枚の雨戸を繰ると、満山の雪と見たのは
僻目
(
ひがめ
)
、白いというよりは痛いほどの月の光で、まだあけたのではありません。
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
堂守の老人の見たのが
僻目
(
ひがめ
)
ではなく、或る時は、さやけき月の光を白衣に受けて、それが銀のようにかがやき、或る時は、木の下暗に葉影を宿してそれが鱗のようにうつります。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
僻
漢検準1級
部首:⼈
15画
目
常用漢字
小1
部首:⽬
5画
“僻”で始まる語句
僻
僻地
僻見
僻陬
僻村
僻耳
僻事
僻遠
僻論
僻在