ほこ)” の例文
むしろ好んで皮肉をてらふやうなその歪んだ口許くちもとに深い皺を寄せ乍らにや/\とほこりがに裕佐の顔を見てゐた孫四郎はかう云つて高く笑ひ出した。
学問なりその他の名誉めいよを得てほこる者を見ると、彼奴きゃつちかごろ一円もらったばっかりだな、ああいうふうにやっては明日の日の登る前に形無かたなしになるであろうと思う。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
は、いたづらに西部文明の幻影を追随して栄華を春日しゆんじつの永きにほこる貴族者流と、相離るゝ事甚だ遠し。
トルストイ伯 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
或時あるとき故人こじん鵬斎先生ばうさいせんせいより菓子一をりおくれり、その夜いねんとする時狐の事をおもひ、かの菓子折を紵縄をなはにてしかくゝ天井てんじやうへ高くりおき、かくてはかれがじゆつほどこしがたからんとみづからほこりしに
父母が梅子に対する悪感情を、ほこりがに伝達しつ、又た姉の悲哀の容態をば尾鰭をひれを付けて父母に披露す、芳子は流石さすがにお加女かめ夫人の愛児なり、梅子の苦悶くもんを見て自ら喜び、姉を讒訴ざんそして
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
われは、教会の義財箱にちやら/\と響きさして、振り向きてほこがほある偽善家をにくむと共に、行為の抑制を重んじて心の広大なる世界を知らざるものをあはれむ事限りなし。
各人心宮内の秘宮 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
人間はつひに何のたはれごとなるべきやを疑へり、然り、我が五十年の生涯に万物の霊長としてほこるべき日は幾日あるべき、我は我をひくうするにあらず、我自ら我を高うせんとするにもあらず
我牢獄 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
世を殺せし者必らずしも虚栄にほこる勝利者のみにはあらじ、力ある者は力なき者を殺し、けんある者は権なき者を殺し、智ある者は智なき者を殺し、げふある者は業なき者を殺し、世は陰晴常ならず
最後の勝利者は誰ぞ (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
敢て兵甲を以て天下にほこらず、而も諸強国に対峙たいぢして遜色ある事なし。
想断々(2) (新字旧仮名) / 北村透谷(著)