余生よせい)” の例文
が、ただ一つ御耳に入れて置きたいのは、当日限り私は狂人と云う名前を負わされて、憐むべき余生よせいを送らなければならなくなった事でございます。
疑惑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
わたくしはそこで忠実ちゅうじつ家来けらい腰元こしもと相手あいて余生よせいおくり、そしてそこでさびしくこの気息いきったのでございます。
そのうずの中からのがれたい。たとえこの荒れた島はいかにさびしくとも、ここで静かに余生よせいを送りましょう。私が朝夕心をつくしてご奉公申し上げますから。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
桜島の生活は、既に余生よせいに過ぎぬ。自然に手に力が入り、揃えた毛布を乱暴に積み重ねると、私は服を着け、洞窟を出て行った。午後の烈しい光線が、したたかに瞼にみわたった。
桜島 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
我事わがことすでにおわれりとし主家の結末と共に進退しんたいを決し、たとい身に墨染すみぞめころもまとわざるも心は全く浮世うきよ栄辱えいじょくほかにして片山里かたやまざと引籠ひきこもり静に余生よせいを送るの決断けつだんに出でたらば、世間においても真実
くにのために余生よせいささげることにしたのです。
村へ帰った傷兵 (新字新仮名) / 小川未明(著)
良人おっともなければ、いえもなく、またあとをつぐべき子供こどもとてもない、よくよくのひとかく鎌倉かまくらもどって、心静こころしずかに余生よせいおくるのがよいとおもうが……。
そして、そこで、余生よせいおくったのであります。
さかずきの輪廻 (新字新仮名) / 小川未明(著)