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何某殿
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なにがしどの
「いかに
方々、
御前へ
申し、
何某殿の
御内室をも
一所に
此中へ
入れ
申さむか、
雌雄ならでは
風情なく
候」などと
散々。
然ればよなと
思ひながら、
殊更に
知らず
顏粧ひつゝ、
主人は
御婦人なるにや、
扨は
何某殿の
未亡人とか、さらずは
妾なんどいふ
人か、
別して
與へられたる
邸宅かと
問へば
此の頃
俄に其の影を見せぬは、必定
函根の湯気
蒸す所か、
大磯の
濤音冴ゆる
辺に
何某殿と不景気知らずの
冬籠り、
嫉ましの御全盛やと思ひの外、
実に驚かるゝものは人心
右の如くに
記し
有しかば
住持祐然に
書寫させ其
奧へ右之通り
相違御座なく候に
付即ち
調印仕り候以上月日
寺社奉行
何某殿と
奧書を
認めさせ次右衞門是を
受取ば三五郎
懷中より金二十兩を