伏在ふくざい)” の例文
こういう性質は神経衰弱その他生理的な病気が伏在ふくざいしているめに来ることもあれば、当人の我儘わがままから来ることもある。
良人教育十四種 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「ハ……いえ、しかるに、先方に思わぬじゃまが伏在ふくざいいたしまして、十方斎先生のおくなりあそばしたをよいことに源三郎様に公然と刃向かいましてな」
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
こんな長閑気のんき仙人せんにんじみた閑遊かんゆうの間にも、危険は伏在ふくざいしているものかと、今更ながら呆れざるを得なかった。
野道 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
軍国主義の精神には一時的以上の真理が何処どこかに伏在ふくざいしてゐると認めても差支さしつかへないかも知れない。
点頭録 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
勘次かんじ内儀かみさんの心裡こゝろ伏在ふくざいして何物なにものかをもとめるやうな態度たいどでいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
あいつが三人の者を殺したのだ。丁度ちょうど首吊りのあった晩、同じ真向うの窓から、あいつが覗いていた。そして、意味ありげにニヤニヤ笑っていた。そこに何かしら恐ろしい秘密が伏在ふくざいしているのだ。
目羅博士の不思議な犯罪 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
もっともっと秘密が伏在ふくざいしているのであろう。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
何かその間に事情が伏在ふくざいするようでもある。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
たゞたあおもへねえよ、勘次かんじさんもあゝいにねえでもよかんべとおもふのになあ」嘆聲たんせいはつしては各自かくじこゝろ伏在ふくざいしてあるものくちには明白地あからさまふことをはゞかやう見合みあはせてたがひわらうてはわづか
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)