仕上しあげ)” の例文
細工さいく流々りゅうりゅう仕上しあげ御覧ごらん」というが、物件ぶっけんならば、できた仕事で用にたつが、人間はそうはいかぬ。細工さいくする間の心持ちが大切たいせつである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
其代りふでちつとも滞つてゐない。殆んど一気呵成かせい仕上しあげた趣がある。したに鉛筆の輪廓があきらかにいて見えるのでも、洒落なぐわ風がわかる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
僕の木彫もくちょうだって難関は有る。せっかくだんだんと彫上ほりあげて行って、も少しで仕上しあげになるという時、木の事だから木理もくめがある、その木理のところへ小刀こがたなの力が加わる。
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
イヤサ何も彼も己にまかせて一しよに來い細工さいく流々りう/\仕上しあげを見やれサア/\早く支度してと云にお節も一生懸命しやうけんめい村役人へあづけの身なれど跡は野となれ山坂を足に任せて走り行相良の城下を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
またさわやかな初夏しよか百姓ひやくしやうせはしくなつた。おつぎはんだおしな地機ぢばたけたのだといふ辨慶縞べんけいじま單衣ひとへるやうにつた。はりつやうにつたときおつぎはこれ自分じぶん仕上しあげたのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
伸太郎 これをどうしても今日中に仕上しあげたいと思ったものだから。
女の一生 (新字新仮名) / 森本薫(著)
それでとても外国では私の事業を仕上しあげる訳に行かない、とにかくできるだけ材料を纏めて、本国へ立ち帰った後、立派に始末をつけようという気になりました。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「心配する事があるもんですか。細工はりゅうりゅう仕上しあげ御覧ごろうじろって云うじゃありませんか」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
三四郎は画のみちくらいから、あんなおほきながくが、の位な速度で仕上しあげられるものか、殆んど想像のほかにあつたが、美禰子から注意されて見ると、余り早く出来過できすぎてゐる様に思はれる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)