よろ)” の例文
旧字:
津田から愛されているあなたもまた、津田のためによろずをあたしに打ち明けて下さるでしょう。それが妹としてのあなたの親切です。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
おそらく闘争は神代よりあった、上御一人をしてよろずのやからべさせたもうことは神の大御心の測りがたいところではあるまいか、ともある。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「一詩箋しせん後便までに社中の者どもに書かせ差上げ申す可く候。よろづ後便に申しもらし候。頓首とんしゅ。春道様。四月二十日。藍。」
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
天皇おかくれになってよろず過ぎゆく御心持であろうが、ただ思想のあやでなく、もっと具体的なものと解していい。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
吾が力をたのむほどの自信もなし。かるがゆゑに人のかみに立たんなどの身に過ぎる事に志すべからず。よろづ吾が程を知りて、分に安んじなば身も安全なるべし。
聴水は打ち喜び、「よろづは和主おぬしまかすべければ、よきに計ひ給ひてよ。謝礼は和主が望むにまかせん」ト。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
どうか神様があんたによろづの物を、あらゆる不足のない福徳を、割前だけの麺麭を
よろず足らわぬことぞなき
県歌 信濃の国 (新字新仮名) / 浅井洌(著)
二、よろ依怙えこの心なし。
花吹雪 (新字新仮名) / 太宰治(著)
そもそもかく外国々とつくにぐによりよろづの事物ものごとの我が大御国おおみくにに参り来ることは、皇神すめらみかみたちの大御心おおみこころにて
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
かくよろずの物がしみとおるような力で彼の内部なかまでもはいって来るのに、彼は五十余年の生涯をかけても、何一つ本当につかむこともできないそのおのれの愚かさつたなさを思って
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
人のは限りあるを、限りなきよろづの物のことわりを考へきわめんとするにつけては、ひたる説多く、元よりさかしらなる国風くにぶりなるゆえに、現在の小理にかかはつて、かへつて幽神の大義を悟らず。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)