一山ひとやま)” の例文
あゝ此の金があったら又一山ひとやまおこして取附く事もあろうかと存じまして、無理に七日までお泊め申しましたが、愈々いよ/\明日みょうにちお立ちと聞きましたゆえ
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
前棒さきぼう親仁おやじが、「この一山ひとやまの、見さっせえ、残らずとちの木の大木でゃ。皆五抱いつかかえ、七抱ななかかえじゃ。」「森々しんしんとしたもんでがんしょうが。」と後棒あとぼうことばを添える。
栃の実 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
よりわけがすむと、今度こんどは、一山ひとやま売りのもりわけです。いたみはじめたくだものの箱の中から、一山十せんだの二十銭だのというぐあいに、西洋皿せいようざらへもりわけるのです。
水菓子屋の要吉 (新字新仮名) / 木内高音(著)
かくて二人ふたり一山ひとやまの落ち葉燃え尽くるまで、つきぬ心を語りて黎明あけがた近くなりて西の空遠く帰りぬ。
(新字新仮名) / 国木田独歩(著)
かくこの一山ひとやまを退治ることは当分御免をこうむりたいと思って、用箪笥の上へ移したのである。
あそび (新字新仮名) / 森鴎外(著)
一山ひとやま二山ふたやま、とやるね。一山は約三百億粒だとかいふ話だが、誰もそれをいちいち算へた事も無い。それを約百萬山くらゐ積み重ねると、まづざつとあれくらゐの峯が出來る。
お伽草紙 (旧字旧仮名) / 太宰治(著)
一山ひとやまめぐって、も一つ山にさしかかろうとする頃うしろの方で鈴の音がかすかに聞こえていた。
遍路 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
見ているうちに、小屋は一山ひとやまの火となり、やがて、十坪もない灰にってしまった。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どれれも俊秀しゆんしうなら、俊秀しゆんしう一山ひとやまもんだとも言得いひえられる。
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
一山ひとやま二山ふたやま、とやるね。一山は約三百億粒だとかいふ話だが、誰もそれをいちいち算へた事も無い。それを約百万やまくらゐ積み重ねると、まづざつとあれくらゐの峰が出来る。
お伽草紙 (新字旧仮名) / 太宰治(著)
一山ひとやまめぐつて、も一つ山にさしかからうとする頃うしろの方で鈴の音がかすかに聞こえてゐた。
遍路 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
枝ははびこって、谷にわたり、葉は茂って峰をおおい、根はただ一山ひとやままとって居たろう。
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
えだはびこつて、たにわたり、しげつてみねおほひ、はたゞ一山ひとやままとつてたらう。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
加州家かしゅうけの御先祖が、今の武生たけふの城にござらしった時から、おの入れずでの。どういうものか、はい、御維新前まで、越前のうちで、此処ここ一山ひとやまは、加賀かが領でござったよ——お前様、なつかしかんべい。
栃の実 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)