-
トップ
>
-
ひんゐ
見る
目に
見なば
美男とも
言ふべきにや、
鼻筋とほり
眼もと
鈍からず、
豐頬の
柔和顏なる
敏、
流石に
學問のつけたる
品位は、
庭男に
成りても
身を
放れず、
吾助吾助と
勝手元に
姦ましき
評判は
それは
例へば
堂塔伽藍を
造る
場合に、
巨大なる
重い
屋根を
支へる
必要上、
軸部を
充分に
頑丈に
組み
堅めるとか、
宮殿を
造る
場合に、その
格式を
保ち、
品位を
備へるために、
優良なる
材料を
用ひ
(
美津、
下駄を
買うてやるか。)と
言つて
見たが、
默つて
返事をしなかつた。
貞淑なる
細君は、
其の
品位を
保つこと、
恰も
大籬の
遊女の
如く、
廊下で
會話を
交へるのは、
仂ないと
思つたのであらう。