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すりかみがは
飯坂と、
此の
温泉は、
橋一つ
隔てるのであるが、
摺上川を
中にして
兩方から
湯の
宿の
裏の、
小部屋も
座敷も、お
互に
見え
合ふのが
名所とも
言ふべきである……と、
後に
聞いた。
旅費が
少いから、
旦那は
脇息とある
處を、
兄哥に
成つて、
猫板に
頬杖つくと、
又嬉しいのは、
摺上川を
隔てた
向う
土手湯の
原街道を、
山の
根について
往來する
人通りが、
衣ものの
色、
姿容は
唯見ると、
渡過ぐる
一方の
岸は、
目の
下に
深い
溪河——
即ち
摺上川——の
崖に
臨んで、づらりと
並んだ
温泉の
宿の
幾軒々々、
盡く
皆其の
裏ばかりが……
三階どころでない、
五階七階に、
座敷を
重ね