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さいぢよ
めし
其方の
妻女近き頃
安産いたせしと聞及ぶ
然るに間もなく
其兒相果しよし其方は
男子の事なれば
左程にも思ふまじけれども
妻女は定めて
懷さびしくも思ふべし
幸ひこの度
出生せし徳太郎は
予が爲には四十二の二ツ子なり
依て
我手元にて
養育致し難し
不便には思へども
捨子にいたさんと思ふなりその
方取上げ妻女の乳を
さればとて
香爐峯の
雪に
簾をまくの
才女めきたる
行ひはいさゝかも
無く
深窓の
春深くこもりて
針仕事に
女性の
本分を
盡す
心懸け
誠に
殊勝なりき、
家に
居て
孝順なるは
出て
必らず
貞節なりとか