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かつてぐち
夜に
成つて
板の
間の
娘等が
座敷の
方へ
引かれた
頃勝手口に
村落の
若者が五六
人立つた。
彼等は
婚姻の
夜には
屹度極つた
例の
饂飩を
貰ひに
來たのである。
晝の
間に
用意された
饂飩が
彼等に
與へられた。
掛て
上なと言れてハイと答へなし
勝手口より立出るは娘なる
可し
年齡まだ十七か十八
公松の常磐の
色深き緑の髮は
油氣も拔れど
脱ぬ
天然の
美貌は彌生の花にも増り又
中秋の
新月にも
劣ぬ程なる一個の
佳人身には
栲なる
針目衣を
「九
時十五
分で
御座います」と
云ひながら、それなり
勝手口へ
回つて、ごそ/\
下駄を
探してゐる
所へ、
旨い
具合に
外から
小六が
歸つて
來た。