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おんかほ
それの一つの
御顔に鶯は
塒を作り
うす
氣味わるやにたにたの
笑ひ
顏、
坂本へ
出ては
用心し
給へ
千住がへりの
青物車にお
足元あぶなし、三
島樣の
角までは
氣違ひ
街道、
御顏のしまり
何れも
緩るみて
一同これはと
恐れ
謹みけるに、
良ありて
幸豐公、
御顏を
斜に
見返り
給ひ、「
杢、
杢」と
召し
給へば、
遙か
末座の
方にて、
阿と
應へつ、
白面の
若武士、
少しく
列よりずり
出でたり。
既に
獻立して
待ちたれば
直ちに
膳部を
御前に
捧げつ。「いま
一膳はいかゞ
仕らむ」と
伺へば、
幼君「さればなり
其膳は
籠の
中に
遣はせ」との
御意、
役人訝しきことかなと
御顏を
瞻りて
猶豫へり。