黒鹿毛くろかげ)” の例文
龍太郎は、黒鹿毛くろかげにまたがって、鞍壺くらつぼのわきへ、梅雪をひッつるし、一鞭ひとむちくれて走りだすと、山県蔦之助も、おくれじものと、つづいていく。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「下りてご覧になりますか。」黒鹿毛くろかげに乗っている青年は、後から声をかけた。夫人はかむりを振った。
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
大坪流の古高新兵衛はたくましい黒鹿毛くろかげ、八条流の黒住団七は連銭葦毛れんせんあしげ、上田流の兵藤十兵衛は剽悍ひょうかんな三さい栗毛くりげ、最後に荒木流の江田島勘介は、ひと際逞しい鼻白鹿毛はなじろかげに打跨りつつ
白栗毛しろくりげ黒鹿毛くろかげの見事な馬をいて来させたりして披露ひろうをした。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
黒鹿毛くろかげくらつぼへ踏みまたがった自分の胴脇へ、遠目にも派手やかな古代紫の太紐ふとひもで、八雲のからだを確乎しっかとくくりつけていた。
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼がこの号令を発したときは、彼自身も、一頭の黒鹿毛くろかげにまたがっていた。そして弥四郎の手から受け取った長柄ながえを持つと
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
急に調ととのえた黒鹿毛くろかげの鞍も古びてわびしげな背にゆられながら、蹴上けあげまでかかると、思い出したように、彼は手綱たづなをとめて
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
仮屋かりやまくをしぼって、陣をでた木隠龍太郎は、みずから「項羽こうう」と名づけた黒鹿毛くろかげ駿馬しゅんめにまたがり、雨ヶ岳の山麓さんろくから文字もんじに北へむかった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、ひるみ騒ぐらしい動揺はなく、宗像むなかたの大宮司も、一族百余人を、加担人かとうどに提供し、また、秘蔵の黒鹿毛くろかげの駒を
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この一頭は、勢州峰の城攻めの際、彼が、敵の鉄砲頭近江新七を討った功で、秀吉から賞に貰った黒鹿毛くろかげだった。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
怨敵おんてき梅雪が道なきしげみへげこんだと見るや、ヒラリと黒鹿毛くろかげを乗りすてて右手めてなる戒刀かいとうを引ッさげたまま
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして往来へ出た正成の姿が、黒鹿毛くろかげの狂いを乗りしずめて、むちを小手に持ち直したときだ。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのすがたにぶんと風を生じたかと思うと、漆艶うるしつや黒鹿毛くろかげと、陽にきらめく偃月えんげつの青龍刀は
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、彼の駒を、恐ろしい脚速で、鮮やかに追い抜いて行った一頭の黒鹿毛くろかげがあった。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、見事な鞍をおいた黒鹿毛くろかげを一頭曳いて、二人の兵が訪ねてきた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)