黄金かね)” の例文
そのあやふきふんで熊を捕はわづか黄金かねため也。金慾きんよくの人をあやまつ色慾しきよくよりもはなはだし。されば黄金わうごんみちを以てべし、不道をもつてべからず。
芸妓買げいしやがひはなさる、昨年あたりはたしか妾をかこつてあると云ふうはささへ高かつた程です、だ当時黄金かねがおありなさると云ふばかりで、彼様あんなけがれた男に
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
有難え頂戴と、北叟笑いをしているところへ、割いた口から今度は娘っ子が転がり込んで来た! 黄金かねに女、盆歳暮一緒! この夏ア景気がいいぞ!
鸚鵡蔵代首伝説 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
これまでは、夜道ばかりじゃねえ、まっぴる間でも、外をあるいていて、屋敷、やかたが目につくと、すぐに黄金かねの匂いが鼻に来て仕方がなかったものだ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
バサウリュークはすきを渡しながら、『あすこを掘るのぢや、ペトゥロー、あすこにやあな、お主やコールジュが夢にも見たことのないやうな黄金かねがたんまり埋まつてをるのぢや。』
云え。なんだ平家が。なんだ侍が。世の中は弓矢ばかりで廻っちゃいないぞ。黄金かねの力はだれが廻しているんだと思う。——行くなっ、ここの一軒ぐらい。——いや京都中のおんなぐらい、おれが子指の端でもみんな養ってみせてやる
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
黄金かねの世の中ですか」
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
僕は篠田先生の為めなら死んでも構はんて言ふんです、——教会も最早もう駄目です、神様の代りに、黄金かねを拝むんですから
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
「世間の黄金を手に入れるため?」「ハイ、江戸中の黄金こがねをね。ナニ江戸だけじゃ事が小せえ。日本中の黄金かねを掻き集めたいんで」「鼓が何んの用に立つな?」
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
『駄目なこつちやよ、お主が人間の血を手に入れるまでは、その黄金かねを見る訳にはいかんのぢや!』さう言つて妖女ウェーヂマは、彼の前へ白い敷布シーツにくるまれた六つぐらゐの子供をつれて来て
冗談仰言おっしゃっちゃいけません。泥棒に、慈悲、善根なんてものが、ある筈がありますものか。ただ、片一方にゃあ、黄金かねや、宝物が山程あって、片一方じゃ、あすの朝の、一握りの塩噌えんそにも困っている。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
りゅうさん。何だね、この黄金かねは」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それが官位の棒で押へられ、黄金かねくさりしばられて、恐ろしい一夜を過ごした後は、泣いてもワメいても最早もう取り返へしは付かず、女性をんな霊魂たましひを引ツ裂れた自暴女あばずれもの
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
福岡の城主五十二万石、松平美濃守のお邸は霞ヶ関の高台にあったが、勾坂甚内は徒党を率い、新玉あらたまの年の寿ことぶきに酔い痴れている隙を窺い、金蔵を破って黄金かねを持ち出した。
三甚内 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
煙草たばこばかり吹かしている洪牙利ハンガリー人や、顔色の黒いヌビヤ人や、身長せいの高くない日本人や、喧嘩早い墨西哥メキシコの商人などが、黄金かねの威力に圧迫され、血眼ちまなこになって歩いている。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その時、襖がそっと開いて、そこからドサリとこっちの室へ、黄金かねの包みが落ちて来た。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
黄金かねをくれようと苦心しても、聖者は決して取らなかった。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)