馬匹ばひつ)” の例文
馬匹ばひつ徴発ちょうはつが行われた。具足師へ修理に出してあるよろいや物の具を家中の侍はみな催促に争っている。等、等、等、相次ぐ情報なのである。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三十六年には主務なる又一またいちは一年志願兵となり、其不在中大雪に馬匹ばひつの半数をたおしたり。三十七年には相与あいともに困苦に当るの老妻は死去せり。
関牧塲創業記事 (新字新仮名) / 関寛(著)
娯楽用馬匹ばひつまたは馬車に対する租税は、かかる享楽物を備えている者により、かつ彼らがそれらを備えている程度に正確に比例して、支払われる。
「或会社の重役の令嬢だよ。背景も橋本さんなんかよりグッと好い勘定だけれど、乗りかけた舟だからね。見す/\北海道の馬匹ばひつに渡したくない」
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
驢馬ろばのたぐいを多く飼っていて、往来の役人や旅びとの車に故障を生じた場合には、それを馬匹ばひつやすく売ってやるので、世間でも感心な女だと褒めていた。
気象雄健なアルゼリイ種の馬匹ばひつが南佐久の奥へ入りましたのは、この時のことで。今日一口に雑種と称えているのは、おもにこのアルゼリイ種を指したものです。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
やがて年が改まるとともに、被害の最も甚だしいニジニ・ノヴゴロド県へ出かけ、郡会長をしていた旧友エゴーロフと協力して、難民のため馬匹ばひつ購入の機関を設けた。
敵は靉河あいか右岸に沿い九連城以北に工事を継続しつつあり、二十八日も時々砲撃しつつあり、二十六日九里島きゅうりとう対岸においてたおれたる敵の馬匹ばひつ九十五頭、ほかに生馬六頭を得たり——
号外 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
あの女であるとすれば——あの女はどうやって隊についてカガヤン渓谷をのぼって来たのであろう。あれは言語に絶する難行軍であった。過労のため兵は倒れ馬匹ばひつは足を滑らして落ちた。
日の果て (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
衆およそ三万五千、馬匹ばひつ千三百、旌旗せいき天をおおい、鼓声こせい地に震う。一藩の政、その利害の及ぶ所小、故にややもすれば改革行われやすし。一天下の政、その利害の及ぶ所大、故に較れば行われ難し。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
すでに、熱帯風土病である黒死病ペストのために班員中七名の土人人夫を失い、猛獣のため三名を失い、馬匹ばひつは六頭をたおされ、残る班員の大多数もひげぼうぼうとして山男のごとく、被服は、汗とちり
令嬢エミーラの日記 (新字新仮名) / 橘外男(著)
又一君も馬匹ばひつを見がてら阪の上まで送って来た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
馬匹ばひつ一万頭。
大震火災記 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
御領内の馬匹ばひつや武具が、敵のほうへ持ち行かれるのをなぜ早速にお取締りにならぬのかと不審に思われるのでござった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
気象勇健な「アルゼリイ」種の馬匹ばひつが南佐久の奥へ入りましたのは、この時のことで。今日一口に雑種と称えているのは、おもにこの「アルゼリイ」種を指したものです。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
更に能く凝視するに馬匹ばひつをつなぐ「ワク」あるを覚えたり。故に偶然に此れ我牧塲なるかと思いつつ、更に北に向うて進むに、いつの広き湿地あり。馬脚は膝を没するも馬腹に至らず。
関牧塲創業記事 (新字新仮名) / 関寛(著)
馬匹ばひつ糧米りょうまいなど軍需の品々も、できる限り後方よりご援助しますから、河南には少しもご憂慮なく、一路北平の公孫瓚こうそんさんをご討伐あって万民安堵あんどのため
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今は馬匹ばひつを見ることも少いが、丘陵の起伏した間には、遊び廻っている馬の群も遠く見える。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「ほ。……いやかたじけない。早速の快諾に、申しては失礼だが、利にさとい商人たるお身らが、どうしてそう一言のもとに、多くの馬匹ばひつを無料でそれがしへ引渡すといわれたか」
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
伊那の谷からの通路にあたる権兵衛ごんべえ街道の方には、馬の振る鈴音に調子を合わせるような馬子唄まごうたが起こって、米をつけた馬匹ばひつの群れがこの木曾街道に続くのも、そういう時だ。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
私の胸には種々な記憶が浮びあがって来た。ファラリイスのこま三十四頭、牝馬めうま二百四十頭、牡馬おうままで合せて三百余頭の馬匹ばひつが列をつくって通過したのも、この原へ通う道だった。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と、曹操から答えて、糧米りょうまい馬匹ばひつ、そのほか、おびただしい軍需品をととのえて渡した。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)