頸飾くびかざり)” の例文
「そうですね、面白いか面白くないかとうことでなしに僕が一番苦心したのは、やっぱりあの黄色金剛石イエローダイヤモンド頸飾くびかざり事件の時でしたね」
骸骨島の大冒険 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
うなじには銀の頸飾くびかざりをかけて、手に一本の刺又さすまたをかまえて一ぴきチャー(西瓜を食いに来るという獣、空想上の獣で、猹の字は作者の造字)
故郷 (新字新仮名) / 魯迅(著)
真珠の頸飾くびかざりをゆったり掛けて、ラプンツェルがすっくと立ち上った時には、五人の侍女がそろって、深い溜息をもらしました。
ろまん灯籠 (新字新仮名) / 太宰治(著)
(幸子は彼女の頸飾くびかざりとか指輪の中には、奥畑貴金属店の陳列だなから出た物もあるのではないかと、ひそかに疑ったこともあった)
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
こいつ一匹だけは鬚ぼうぼうの顎を頸飾くびかざりの中へすっこめて、しゃがんだまま、地面じべたにつきそうなくらい身を伏せて、そこからくだんの声を立てているのだが
それが、ある時は金剛石ダイヤ入りの指輪だった。ある時は、白金プラチナの腕時計だった。ある時は、真珠の頸飾くびかざりだった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
垂飾たれかざりをつけた日傘ひがさ花楸樹はなかまどよ、ジタナ少女をとめくびにある珊瑚玉さんごだま、その頸飾くびかざり柔肌やははだ巫山戲ふざけた雀が來てつゝく。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
ねえ、ジエィン、あなたは私があのあなたに上げた小さな眞珠の頸飾くびかざりを今でもこの襟飾ネクタイの下の黒い頸に捲きつけてゐることを知つてゐる? 私は遺品かたみだと思つて、私の寶を
実をいうと『金色夜叉』は最初の構想が中途で何度も変ってまとまりが附かなかった未成品であるが、真珠の頸飾くびかざりちぎれたのを南京玉ナンキンだまで補ったような続篇が二つも三つも出来て、芝居は勿論
そしていつもの習慣通りに小箪笥こだんすの引出しから頸飾くびかざりと指輪との入れてある小箱を取出したが、それはこの際になって何んの用もないものだと気が付いた。クララはふとその宝玉に未練を覚えた。
クララの出家 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
頸飾くびかざりなんぞ、珠なんぞ。貴女の腰掛けている、それは珊瑚だ。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
頸飾くびかざりを草の上にとゞ
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
我等は貴君に警告す、我等は来る八月十八日深夜二時を期して、貴君の伯父おじ若林子爵家の所蔵する黄色金剛石イエロオダイア頸飾くびかざりを奪いとるべし。
黒襟飾組の魔手 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
お金もそれと同じ役に立ち得る物も何も持つては行かなかつたことを確めたとき、私はどんな氣持がしたらう! 私のあげた眞珠の頸飾くびかざりは手もつかないで小函こばこに入つてゐた。
(指輪の外に、腕時計、ブローチ、コムパクト、頸飾くびかざり等々があったことは勿論もちろんである)兎に角、何十年も奥畑家に奉公して、奥畑を赤子あかごの時から育てている婆やのことであるから
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
その頸飾くびかざりは二つある。雀は少女をとめの肩にた。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
自分の邸に珍蔵してある黄色ダイヤの頸飾くびかざりを中心にして、ヤンセン牧師との一騎討事件だのを、我ことのように話しつづけるのであった。
謎の頸飾事件 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
これ等の品を探す内にふと私は、數日前ロチスター氏が強ひて私にとらせた眞珠の頸飾くびかざりの珠に出會した。私はそれをとらなかつた。それは私のものではない。それは空に消えてしまつたまぼろしの花嫁のだ。