頭髮あたま)” の例文
新字:頭髪
千代松といふ人は頭髮あたま丁髷ちよんまげつてゐた。幾ら其の頃でも、村中で丁髷はただこの千代松の頭の上に見らるゝだけであつた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
與吉よきち横頬よこほゝ皮膚ひふわづか水疱すゐはうしやうじてふくれてた。かれ機嫌きげんわるかつた。みなみ女房にようばう水疱すゐはう頭髮あたまへつける胡麻ごまあぶらつてやつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
頭髮あたまの中を這つて、額や頬邊ほつぺたを傳ふ酒の雫は、襟頸やふところに流れ込んだ。怒るだらうと思つた三田が默つて坐つてゐるので、蟒は張合がぬけてしまつた。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
「おつぎはそんだが頭髮あたまてか/\ひからかせたとこつちやつたつけぞ」にはかおもしたやう先刻せんこく噺手はなしてがいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
『だからね、あの下駄を改良かいりやうして、其の頭髮あたまを少し直せば、一寸ちよつと誤魔化ごまくわせるよ、……君は。……見る人が見れば直ぐ分るだらうが、僕なんぞにはね。』
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「そんでも、他村ほかむらからんだつてつけぞ、支度したくしてんだつて今日けふ頭髮あたまつてゝいたんだぞ」
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
長く伸ばした頭髮あたまを、分けたのでもなく、分けぬのでもなく、馬のやうに額に垂れてゐるのも陰氣臭かつた。お光は周章あわてゝ金時計と旅行案内とを押し隱した。——腋臭わきがのにほひがプンとした。
兵隊の宿 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)