陸続りくぞく)” の例文
そこで彦太郎は陸続りくぞくと読んだ。それを怒ったのが権臣であった。すなわち田沼主殿頭であった。すぐ彦太郎を退けてしまった。
銅銭会事変 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
京、大坂はもちろん、遠くは西国から、また関東地方や北陸からも、各〻、弟子や職人を連れて来る工匠たくみたちが、陸続りくぞくとこの安土へ集まった。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼らは、やがて後から陸続りくぞくとして墜落して来るであろう人間の、新鮮な生活の訓練のために、意気揚々として踊っていた。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
眼障りだから取払えと荘公は命じ、都門の外十里の地に放逐させることにした。幼を負い老を曳き、家財道具を車に積んだ賤民共が陸続りくぞくと都門の外へ出て行く。
盈虚 (新字新仮名) / 中島敦(著)
年額七百万円の鯖が五百万、二百万と見る見るうちにタタキ下げられて行く。税金が納められないどころの騒ぎじゃない。小網元の倒産がくびすを接して陸続りくぞくする。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それ等の霊魂達は、悪鬼の如く荒れ狂いながら、陸続りくぞくとして肉体から離れて幽界へなだれ込む。
この日、避難民の田端たばた飛鳥山あすかやまむかふもの、陸続りくぞくとして絶えず。田端もまた延焼せんことをおそれ、妻は児等こらをバスケツトに収め、僕は漱石そうせき先生の書一軸を風呂敷ふろしきに包む。
かつ今日のごとく音語、新字陸続りくぞく更出こうしゅつするときは、多年の苦学にあらざれば通常の書も読むことあたわず。しからばすなわち和漢雑用もまた、教化訓導のほか日用便利のうつわにあらず。
平仮名の説 (新字新仮名) / 清水卯三郎(著)
定刻が近づくと、航空局長官のG氏を始め朝野の関係者が、陸続りくぞくと来着した。物々しい送別の辞が交わされる、前途を祝する乾盃が行われる。新聞社の写真班がカメラの砲列を敷く。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
夜間ばかりでは運搬しきれないものと見え、真昼間にも陸続りくぞくとしてくだって行った。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
まず! 岐阜ぎふの信長どのには、すでに御出馬あって、三万余の大軍、陸続りくぞくと岡崎表よりこれへお進みあるぞッ。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
陸続りくぞくとして現出する時代の近き将来に於て来り得べきことも、予想するにかたからざる事となるべし。
押絵の奇蹟 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
妖韻よういんのこもったかねがゴーンと鳴りわたると、よろいを着た者、雑服ぞうふくの者、陸続りくぞくとして軍議室にはいってくる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すなわち翁はこの前後に重き習物の能を陸続りくぞくと披露している。
梅津只円翁伝 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
そのあいだをまた羽柴筑前守が家中として、見栄みばえの劣らない者どもが、各〻盛装をらし、進物之奉行しんもつのぶぎょうとして、或いは警固や足軽がしらとして、陸続りくぞく山へ登って来る。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やがて、陸続りくぞくと、甲冑かっちゅうの団々たる群れと群れとが、今朝までの方向とは逆に、背進はいしんしだした。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
蟻のごとく陸続りくぞくと、これへ向って行軍中の後続隊もあるらしく、前隊との聯絡れんらくをとるための法螺貝ほらがいが遠く夏山のはるか下の方に聞えているので、ここでもたえず法螺貝をもってそれに答えていた。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)