“開(ひろ)” の例文
年上なるは幼なき人の膝の上に金(きん)にて飾れる大きな書物を開(ひろ)げて、そのあけてある頁(ページ)の上に右の手を置く。象牙(ぞうげ)を揉(も)んで柔(やわら)かにしたるごとく美しい手である。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
はじめは何処(どこ)のお子さんと訊(き)いたりして、姉妹で私の肩上げをつまんだり袂(たもと)の振りを揃えて見たりしていたが、段々に馴染(なじ)んで先方(むこう)でも大っぴらに表の障子を明け開(ひろ)げて
折(をり)ふしは遂(つ)ひに今(いま)まで見(み)し事(こと)もなき日本全圖(にほんぜんづ)などヽいふ物(もの)をお民(たみ)がお使(つか)ひの留間(るす)の間(ま)に繰(く)り開(ひろ)けて居(ゐ)る事(こと)もあり、新聞紙(しんぶんし)の上(うへ)にも札幌(さつぽろ)とか北海道(ほくかいだう)とか言(い)ふ文字(もじ)には逸(いち)はやく目(め)のつく樣子(やうす)
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ういういしい花嫁君(ぎみ)の行く道には、祝いの花がまかれないで、呪(のろ)いの手が開(ひろ)げられていたのか、京都下加茂(しもがも)の北小路家へ迎えられるとほどもなく、男の子一人を産んで帰った。
柳原燁子(白蓮) (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)