銃口つつぐち)” の例文
銃口つつぐちわたくしの胸の処へ向きましたものでございますから、飛上って旦那様、目もくらみながらお辞儀をいたしますると、奥様のお声で
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
B首領の「折れた紫陽花」は決心をしたものか、その返事の代りに、ズドンズドンと拳銃ピストル銃口つつぐちを、組みあった二人の方に向けた。
流線間諜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
龍介君は狙い撃ちに二発撃った——パッパッと赤い火が銃口つつぐちから走ったと思うと「あっ‼」と声をあげて怪しい男はもんどり打って倒れた。
危し‼ 潜水艦の秘密 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
あるじが叫び出したが、自分で何をいい出したかわかってはいますまい。鉄砲の銃口つつぐちが無暗に上り下りして躍っています。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
明智が力を抜いたので、今まで腕をねじ上げられていた奴が、いきなり飛びかかってピストルを奪い返し、反対に明智の背中へ銃口つつぐちを押しつけた。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
爆薬は口火を点ずる先に、金庫室の扉は三方からサッと開いて、光りの洪水の中に、銃口つつぐちを揃えて数十挺のピストル。
青い眼鏡 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
見れば盆地の一所に、弓、鉄砲を持った十五、六人の武士が、冬次郎他五人のものを、中へ取りこめ真ん丸に包み、やじりを向け銃口つつぐちを差しつけていた。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
隊列を整えて馬橋まばしから南へみちをとり、中野で銃口つつぐちを城に向け、三十ちょう一時に放発して、君臣手ぎれの狼火のろしに代えた。
討たせてやらぬ敵討 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
二間ばかり離れて仮面をつけたモーニングの男が二人にピストルの銃口つつぐちをさしむけながら悠々とはいってくる。
探偵戯曲 仮面の男 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
「本当に殺されるのか」とは、自分の耳を信用しかねた彼が、かたわらに立つ同囚どうしゅうに問うた言葉である。……白い手帛ハンケチを合図に振った。兵士はねらいを定めた銃口つつぐちを下に伏せた。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
生命いのちがけの仕事をしていたことは、その所持しているピストルが、非常な旧式を使いらしたもので、且つ銃口つつぐちの旋条が著しく磨滅しているのを見れば、容易にうなずかれる。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
彼は、その秒間だけは、決してたまが来ないということを、胸のうちはかっていた。なぜならば、梢の上の人間は、枝にまたがって、三道の方へ銃口つつぐちを向けながら見張っていたからである。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ふと見たられた垣根かきねの隙間から銃口つつぐちてる雀つかあなや
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
しつけられんか。銃口つつぐちを見て何の辺を覗っているか——」
近藤勇と科学 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
うしろ向きになって、的の姉さんを袖姿見てかがみに映して狙いながら、銃口つつぐちを、ズッと軽くやわらかに肩にめて、そのうしろむき曲打にズドンと遣るんだ。いや、肝を冷す。
久子の台辞せりふのおわらぬうちに、樹陰から、前に出てきたのと同じような仮面の男が、忽然として、しかし静かに現れ、四人の方へピストルの銃口つつぐちを向けながら直立している。
探偵戯曲 仮面の男 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
小幡民部の民蔵は、伊那丸と聞いてギクッとしたが、龍巻に顔色を見すかされてはと、わざといさみたって、渡された種子島たねがしま銃口つつぐちをかまえ、船の真上へ鷲がちかよってくるのを待った。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その銃口つつぐちを覗いて見ながら……
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
うしろをふり向くと二間ばかりはなれたところに、一人の男が中腰になって、私の胸のあたりへ短銃ピストル銃口つつぐちを向けている。顔はよくわからぬが、どこかで見たことのある人のようにも思われる。
動物園の一夜 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
銃口つつぐちをみなあの上の岩角にあつめろ。一斉いっせいに撃て」
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
の下三寸に銃口つつぐちを向ければ
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)