金時きんとき)” の例文
渡辺綱が羅生門らしょうもんの鬼退治に出て行ったあとを見送って、平井ノ保昌やすまさや坂田ノ金時きんときらが「綱の奴め、首尾よく鬼を退治して来るだろうか」
どのひとも桃色のドーランを塗って、金時きんときそっくりの赤い顔をし、額まで隠れるような、緑色の大きなサン・グラスをかけている。
我が家の楽園 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
五月の節句に飾るものも三月とは大違いで、やり、刀、かぶとよろい、弓、矢、それから人形でもなんでも黒い腹掛けをかけた力のある金時きんときのたぐいです。
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
今ま直ぐと云ふわけにもなるまいが、何卒どうぞ伯母の健康たつしやな中に左様さうしなさい、山姥やまうば金時きんときで、猿や熊と遊んで暮らさうわ、——其れは左様さうと、今度は少し裕然ゆつくり泊つて行けるだらうの——
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
鍾馗しょうきにしろ金時きんときにしろ、皆勇ましく荒々しいものだが、鍾馗は玄宗皇帝の笛を盗んだ鬼をとらえた人というし、金時は今も金時山に手玉石という大きな石が残っている位強かったというが
梵雲庵漫録 (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
頼光らいこう土蜘蛛つちぐもに悩まさるる折、綱、金時きんとき宿直とのいする古画等に彼輩この風に居眠る体を画けるを見れば、前に引いた信実の歌などに深山隠みやまがくれの宿直猿とのいざるとあるは夜を守って平臥せぬ意と見ゆ。
それがまたね、いつものとおりに金時きんときのように首筋までまっですの。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「やあ、金時きんとき足柄山あしがらやま、えらいぞ金太郎きんたらう。」と三助さんすけが、んで
銭湯 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
箱根山はこねやまかたちからいへば複式火山ふくしきかざん經歴けいれきからいへば死火山しかざん外輪山がいりんざん金時きんとき明神みようじん明星みようじよう鞍掛くらかけ三國みくに諸山しよざん中央火口丘ちゆうおうかこうきゆう冠岳かんむりだけ駒ヶ岳こまがだけ二子山ふたこやま神山かみやまとう、さうして最後さいご活動場所かつどうばしよ大涌谷おほわくだにであつて
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
昔話のつな金時きんときのやうに、頼光らいこうの枕もとに物々しく宿直とのゐを仕つるのはもう時代おくれである。
半七捕物帳:01 お文の魂 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
端午たんごの来る頃には——泉太や繁が幼少ちいさい時分に飾った古びた金時きんときこいなぞを取出して見たり
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
昔話のつな金時きんときのように、頼光らいこうの枕もとに物々しく宿直とのいつかまつるのはもう時代おくれである。
半七捕物帳:01 お文の魂 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)