郭公ほととぎす)” の例文
「聞く度に珍らしければ郭公ほととぎすいつも初音の心地こそすれ」と申す古歌にもとづき、銘を初音とつけたり、かほどの品を求め帰り候事天晴あっぱれなり
と驚いて居る時、秀吉は既に此処に移転して、「なきたつよ北条山の郭公ほととぎす」と口吟くちずさんで、涼しい顔をして居た。
小田原陣 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
低味ひくみ畦道あぜみちに敷ならべたスリッパ材はぶかぶかと水のために浮き上って、その間から真菰まこもが長く延びて出た。蝌斗おたまじゃくしが畑の中を泳ぎ廻ったりした。郭公ほととぎすが森の中で淋しくいた。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
ボイにあれは何だと聞けば、——実はちょっと聞いて貰えば、郭公ほととぎすの声と答えたよし。
北京日記抄 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
カックーという美しき郭公ほととぎすの声はこれぞ宇宙自体真秘幽邃ゆうすいの消息であります。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
露に湿しめりて心細き夢おぼつかなくも馴れし都の空をめぐるに無残や郭公ほととぎすまちもせぬ耳に眠りを切って罅隙すきまに、我はがおの明星光りきらめくうら悲しさ、あるは柳散りきりおちて無常身にしみる野寺の鐘
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
その大竹原の上には夏の月がかかっていて、その月影はそのあらい大竹原の間を洩ってちらちらとその大きな竹の幹などにも落ちている、そこに郭公ほととぎすが一声二声鳴き過ぎた、とこういう景色である。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
夏が来れば郭公ほととぎすがしきりとあの哀切な声でなき、昔の人の言った様に
現代語訳 方丈記 (新字新仮名) / 鴨長明(著)
郭公ほととぎす思ひもかけぬ春なけば今年ぞ待たで初音聞きつる
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
郭公ほととぎす君につてなん古さとの花たちばなは今盛りぞと
源氏物語:42 まぼろし (新字新仮名) / 紫式部(著)
「住みかえた家は気安し郭公ほととぎす
寄席 (新字新仮名) / 正岡容(著)
郭公ほととぎす来べき宵なり頭痛持 在色ざいしき
古池の句の弁 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
郭公ほととぎす日高にとくや筒脚半 探志
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
鳴かずあらばたれかは知らん郭公ほととぎす
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
郭公ほととぎす花たちばなの香をとめて
郭公ほととぎすでございます」
峠の手毬唄 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
希代きたいの名木なれば「聞く度に珍らしければ郭公ほととぎすいつも初音はつね心地ここちこそすれ」と申す古歌にもとづき、銘を初音とつけたり、かほどの品を求め帰り候事天晴あっぱれなり
興津弥五右衛門の遺書 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
さらぬだに打寝る程も夏の夜の夢路をさそふ郭公ほととぎすかな
賤ヶ岳合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
あはれさのなぞにもとけし郭公ほととぎす 野水
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
床の間の牡丹のやミや郭公ほととぎす
牡丹句録:子規病中記 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
山吹も散らで貴船きぶね郭公ほととぎす 維駒いく
俳句とはどんなものか (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
郭公ほととぎす大竹原を漏る月夜 芭蕉
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
目に青葉山郭公ほととぎす初松魚はつがつお 素堂
俳句とはどんなものか (新字新仮名) / 高浜虚子(著)