郡代ぐんだい)” の例文
役人共は突退々々つきのけ/\富右衞門を引立つゝ問屋場へと連れ來り宿駕籠しゆくかごのせて江戸馬喰町四丁目の郡代ぐんだい屋敷やしきへ引れしは無殘むざんなることどもなり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「旧幕の頃には天領として郡代ぐんだいが置かれたものでして、ついこのしもの土手に梟首場さらしくびばの跡がございますが」と町長、椅子から伸びあがった。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
すぐに行ってみると、それはの鈴ヶ森の一件で、変死人は市内の屋敷者らしいから、町方の方でその身もとを詮議して貰いたいと郡代ぐんだいからの依頼があった。
半七捕物帳:51 大森の鶏 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
手一杯に土地の下つ引を集めて郡代ぐんだい屋敷から和泉橋の柳森稻荷まで、一パイに見張らしてくれ。面を出しちやならねえ、曲者が逃げ出したら一ぺんに飛び出すやうに
道を隔てた向うに郡代ぐんだい屋敷があり、土堤どてには松林が茂ってい、その土堤囲いの中に池でもあるのか、なにかの水鳥の鳴き交わす声や、飛び立ったり舞いおりたりするのが見えた。
へちまの木 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
その斜向すじむこうに花屋があった。剥身むきみのように幅の広がった顔と体の妹と姉とがいた。二人がいるうちは花屋の店もよけいにぎやかに見えたが、馬喰町ばくろちょう郡代ぐんだい矢場女やばおんなになってしまった。
いのしし? ……。ああ、郡代ぐんだい鷲尾覚之丞わしおかくのじょうどのから、献上なされたあれか」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
表向きに吟味するすべがないでもないが、町方まちかたと違ってここらは郡代ぐんだいの支配であるから、公然彼女を吟味するとなれば、どうしても郡代の屋敷へ引っ立てて行かなければならない。
半七捕物帳:15 鷹のゆくえ (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
日本橋区馬喰町ばくろちょうの裏に郡代ぐんだいとよぶ土地があって、楊弓や吹矢ふきやの店が連なった盛り場だったが、徳川幕府の時世に、代官のある土地の争いや、旗本の知行地ちぎょうちでの訴訟は、この郡代へ訴えたものとかで
同時に、甲州郡代ぐんだい鳥居彦右衛門をも、にわかに、呼びかえして
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
聞て富右衞門やゝ何々なに/\平兵衞殿がと大におどろき夫は大變たいへんな事て殺したやつは知しかと問ばお峰風聞うはさには大方盜賊どろぼう所行しわざならんとの事夫れに付ては若旦那は朔日ついたちより江戸の御郡代ぐんだい屋敷へ御いでなさいまだに御歸りなさらぬが相手が早くしれればよいと云に富右衞門何さ天命てんめいなれば今にぢきしれるであらまづわらぢ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いずれ郡代ぐんだいの方からなんとか云って来るだろうから、今のうちに手廻しをして置く方がいいな。噂を聞くと、狐はいろいろの物に化けるらしい。今に忠信ただのぶくずにも化けるだろう。
半七捕物帳:52 妖狐伝 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
と、郡代ぐんだい同心どうしんが、いかにも田舎いなか役人らしい権柄けんぺいあごをすくう。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)