あしら)” の例文
『暑いでせう外は。先刻さつきから眠くなつて/\為様しやうのないところだつたの。』と富江は椅子を薦める。年下の弟でもあしらふ様な素振だ。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
お作が愚痴をこぼし出すと、新吉はいつでも鼻であしらって、相手にならなかったが、自分の胸には、お作以上の不平も鬱積うっせきしていた。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
彼人をあしらふこと人の自己おのれをあしらふに似たり、そは人は乏しきを見て乞はるゝを待つ時、その惡しき心より早くも拒まんとすればなり 五八—六〇
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
取次いでも無益むやくなれば我が計ふて得させんと、甘くあしらへば附上る言分、最早何も彼も聞いてやらぬ、帰れ帰れ、と小人の常態つねとて語気たちまち粗暴あらくなり
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
「私のことならどうでもお好きなようにお書きなさいな」と私を軽くあしらうように言い足した。
風立ちぬ (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
おもしろ半分にまつわるを、白糸は鼻のさきあしらいて
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
銀子は訳がわからず、不断から仲のわるい染福のことなので、いい加減にあしらっていたが、高飛車に出られむっとした。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
上人様はきさまごとき職人らに耳はしたまわぬというに、取り次いでも無益むやくなれば我が計ろうて得させんと、甘くあしらえばつけ上る言い分、もはや何もかも聞いてやらぬ、帰れ帰れ
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
と言つた調子で、松太郎は、繼母でもあしらふ樣に、寢床の中擦り込んで、布團をかけてやる。渠は何日しか此女を扱ふ呼吸こつを知つた。惡口は幾何吐いても、別に抗爭てむかふ事はしないのだ。
赤痢 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
「何ですか、私はこういうがさつものですから、しかられてばかりおりますの」お島はていよくあしらっていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
と言つた調子で、松太郎は、継母ままははでもあしらふ様に、寝床の中に引擦り込んで、布団をかけてやる。渠は何日いつしか此女を扱ふ呼吸こつを知つた。悪口あくたい幾何いくらいても、別に抗争てむかふ事はしないのだ。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
その書生は鼻であしらって、主婦が汲んで出す茶を飲みながら、昨夜ゆうべの女の話などをしはじめた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
そして当らず触らずに、その場は愛想よくあしらって還したのであったが、肉づきなどのぼちゃぼちゃした、腰の低いその婆さんの、にこにこしたずるそうな顔が、頭脳あたまに喰い込んでいて取れなかった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)