車坂くるまざか)” の例文
先の自動車は、相当の速力で菊屋橋を過ぎ車坂くるまざかに現れ更に前進して上野広小路うえのひろこうじの角を右にカーブして、本郷ほんごう方面に疾走して行きました。
陳情書 (新字新仮名) / 西尾正(著)
戸田茂睡が江戸名所の記『むらさき一本ひともと』、浅井了意が『慶長見聞記けいちょうけんぶんき』等またしかり。『紫の一本』上野車坂くるまざかの条を見んか
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
刺青ほりものの膚にたきなす汗を振りとばして、車坂くるまざか山下やましたへぶっつけ御成おなり街道から筋かえ御門へ抜けて八つじはら
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
彼は久しぶりに下谷の車坂くるまざかへ出て、あれから東へ真直まっすぐに、寺の門だの、仏師屋ぶっしやだの、古臭ふるくさ生薬屋きぐすりやだの、徳川時代のがらくたをほこりといっしょに並べた道具屋だのを左右に見ながら
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それから上野の車坂くるまざかの方へ真直に合羽橋かっぱばしを渡ると、右角が海禅寺かいぜんじ(これは阿波あわ様のお寺)、二丁ほど行くと、右側が東明寺で、左が源空寺……すなわち源空寺門前の父の家のある所で、私は久しぶり
送りけるが娘お幸は今年ことし十七歳となり尋常なみ/\の者さへ山茶も出端でばなの年頃なるにまして生質うまれつき色白いろしろにして眼鼻めはなだちよく愛敬あいきやうある女子をなごなれば兩親りやうしんは手のうちたまの如くにいつくしみ手跡しゆせき縫針ぬひばりは勿論淨瑠璃三味線も心安き方へ頼みならはせ樂みくらして居ける處に一日あるひ長八は淺草觀音へ參詣なし夫より上野の大師へ參らんと車坂くるまざか
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
聞居るお政のつら殘念ざんねん辯解いひわけなすともまことにせず口惜涙くやしなみだむせ返る心の中ぞあはれなり然るに天の助けにや或夜あるよ戌刻いつゝどきとも思ふ頃下谷車坂くるまざかより出火して火事よ/\と立騷ぎければ宅番の者ども大いに驚き皆々我家へ歸り見るに早火の紛は破落々々ばら/\と來たり殊に風もはげしければ今にもやけて來るかと皆々周章狼狽あわてふためき手に/\荷物を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)