“躯(み)” の例文
一腔(こう)の怨毒(えんどく)いずれに向かってか吐き尽くすべき路(みち)を得ずば、自己——千々岩安彦が五尺の躯(み)まず破れおわらんずる心地(ここち)せるなり。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
しかも、こっちを、銑吉の方を向いて、髯(ひげ)をぴちぴちと動かす。一疋七八分にして、躯(み)は寸に足りない。
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
藥草類(やくさうるゐ)を撰(え)ってをったが、顏(かほ)は痩枯(やせが)れ、眉毛(まゆげ)は蔽(おほ)い被(かぶさ)り、鋭(するど)い貧(ひん)に躯(み)を削(けづ)られて、殘(のこ)ったは骨(ほね)と皮(かは)。
躯(み)ひとつで生きてみて、人足をし百姓のてつだいをし、旅籠(はたご)の飯炊きなどをしてみまして、それが思いあがりであったこと、まちがった考えだったということに、気がついたのです
おれの女房 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
喉濶(ひろ)く牙大にしてこの騎士を撃たんと前(すす)む、両足獅のごとく尾不釣合に長く、首尾の間確かに二十二足生え、躯(み)酒樽に似て日に映じて赫耀(かくよう)たり、その眼光りて浄玻璃(じょうはり)かと怪しまれ
かかる世にうまれて弓矢とらん躯(み)には、一八棠谿(たうけい)墨陽(ぼくやう)の剣(つるぎ)、一九さてはありたきもの財宝(たから)なり。されど良(よき)剣(つるぎ)なりとて千人の敵(あた)には逆(むか)ふべからず。金の徳は天(あめ)が下の人をも従へつべし。
河の怒りを鎮めむものと巨大な躯(み)をば跳(をど)らせて
やせ果てし躯(み)はさらにやせて、肉という肉は落ち、骨という骨は露(あら)われ、蒼白(あおじろ)き面(おもて)のいとど透きとおりて、ただ黒髪のみ昔ながらにつやつやと照れるを、長く組みて枕上(まくら)にたらしたり。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)