跳出とびだ)” の例文
私、このお部屋へ入ってきますと、突然夜会服を召した紳士の方が、真暗なドアの蔭から跳出とびだしてきました。
謎の頸飾事件 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
飛付くもう一人の官兵の前へ、石垣を這い上ってスックと立ったのは、先刻さっき姿を隠した日下部欽之丞の満身に返り血を受けて、地獄の底から跳出とびだした、幽鬼のような物凄い姿です。
芳年写生帖 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
すると又、突然いきなりふんどし一点ひとつで蚊帳の外に跳出とびだしたが、自分の荷物は寝る時のまんまで壁側にある。ホツと安心したが、猶念の為に内部なかを調べて見ると、矢張変りが無い。「フフヽヽ」と笑つて見た。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
けれどもしきいまたときに、片方かたほう上沓うわぐつげたので、片足かたあしには、上沓うわぐつ穿き、片足かたあしは、沓下くつしただけで、前垂まえだれけ、片手かたてには、黄金きんくさり片手かたてには、ヤットコをって、まちなか跳出とびだしました。
そのおとをきいて、おとうさんとむすめが、うちから跳出とびだしてると、まえには、一めんに、けむりほのおちのぼってましたが、それがえてしまうと、そのあとに、ちいさなにいさんがっていました。
伊藤次郎は憑かれたように、慄然としながら外へ跳出とびだした。
流血船西へ行く (新字新仮名) / 山本周五郎(著)