跡目あとめ)” の例文
かくの如く山伏にはむづかしき事の御座候よし兼て師匠ししやうより聞及び候に私事は未だ若年じやくねんにて師匠の跡目あとめ相續の儀は過分くわぶんの儀なれば修驗のはふ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
さて情けの種を宿した場合に生まれた子が女なら島へ留めて跡目あとめ相続、男だったら父の在所へ送致する(ここギリシア伝説混入)
「すると、つまるところ」と六郎兵衛が云った、「上に二人の兄があるのに、末子が跡目あとめを継いだ、それが不当だということか」
まだ海のものとも山のものとも分りませぬが、もしお肚の嬰児ややが無事に生れましたら、立派にあなたの跡目あとめを立たせます。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
で、いまではこの安土城あづちじょうのあとへ、信長のぶなが嫡孫ちゃくそん、三法師ぼうしまる清洲きよすからうつされてきて、焼けのこりの本丸ほんまるを修理し、故右大臣家こうだいじんけ跡目あとめをうけついでいる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そういう吉左衛門も、代を跡目あとめ相続の半蔵に譲り、庄屋しょうや本陣問屋といやの三役を退いてから、半年の余になる。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その子息の一人を跡目あとめにして、養子願さえすれば、公辺こうへんの首尾は、どうにでもなろう。もっともこれは、事件の性質上修理や修理の内室には、密々で行わなければならない。
忠義 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「あたしとしては、あなたが道場のお跡目あとめになおるに、なんの異存もございませんけれど、ただ、そのお婿さんの相手が、あの萩乃ではなく、このあたしでさえあれば——」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
しかるに一種変った跡目あとめの処分を受けたのは、阿部弥一右衛門の遺族である。
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「さうか、太い奴があるものだな。直ぐ口書くちがきを取つて、奉行所へ引いて行け。皆の者、御苦勞であつた。別して世之次郎は氣の毒だ。三之助が跡目あとめ相續濟んだ上は、よく世話をしてやるがいゝ」
すれば師匠感應院の後住ごぢうにせんと村中相談一けつしたり左樣に心得こゝろえべしと申渡せば寶澤はうたくつゝしんで承はり答へけるは師匠感應院の跡目あとめ相續致し候樣と貴殿きでん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
が、謙信のそばに、小姓として召仕めしつかわれ、その才を愛されていた。そのうち、上杉一族中の名家、直江大和守の跡目あとめが絶えようとした時、その養子に、謙信が
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(自分もやがて五十にもなるが、いまだに嗣子ししがない。もし、御次男を、ひとり娘の婿にもらえるなら、時を見て、自分は隠居し、跡目あとめを若いふたりに任せたい)
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
披見ひけんに及べば此度松平左京太夫殿御病死ごびやうしの所御世繼よつぎこれ無に付ては加納將監方へおあづあそばし候徳太郎君御跡目あとめしかるべしとの事なり此儀このぎもつともの事なりとて早速さつそく加納將監へ其段申渡しければ將監かしこまり急ぎ立戻たちもどりて其趣そのおもむきを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
と、捨て難い事情にあった小野家の跡目あとめほかへ譲って、山岡姓を名乗る人となってくれたのだった。
剣の四君子:04 高橋泥舟 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御身もよく知っておられるとおり、自分は荊州の世継ぎと生れてはいるが、継母はは蔡氏さいしには、劉琮りゅうそうがあるので、つねにわしをころして琮を跡目あとめに立てようとしている。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「謙信公のお跡目あとめたる春日山のあるじに、馬の口輪を取っていただいたのは、おそらく筑前一人であろうが、途上の領民が、あれを見て、あなたを軽んじはしなかったか」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おたがい何とも痛哭つうこくのほかはないが、すでに事定まった今日となっては、ひとえにお跡目あとめを正し、御遺業をうけついで、御在世の日にまさる忠勤を励ましあうこそ、臣下の道でもあり
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)