超越ちょうえつ)” の例文
「ドノバン君! 暴言はつつしみたまえ。少年連盟は、人種を超越ちょうえつした集団なのだ。きみはちかったことを忘れたのか、あやまりたまえ!」
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
キンチャコフの方が、六条よりも死生を超越ちょうえつしているらしく見える点があって、「火の玉」少尉も少々しゃくにこたえている。
空中漂流一週間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
いままでの、意地いじ興味きょうみなど超越ちょうえつして、ある運命うんめいとものすごい殺気さっきをはらみかけた番外ばんがいばん試合じあいは、こうしてまさにその火蓋ひぶたを切られようとしている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すべての世間的な名利とか名声とかいうものから超越ちょうえつしていなければならぬという意味なのである。
遁走 (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
たとえば油画あぶらえを始めた時にも、彼女の夢中になりさ加減は家族中の予想を超越ちょうえつしていた。彼女は華奢きゃしゃな画の具箱を小脇こわきに、篤介と同じ研究所へ毎日せっせとかよい出した。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
と堀尾君はいつもと違って、見識けんしき超越ちょうえつしていた。明日は一日支度で忙しい。夜分は同郷の先輩岡村さんを訪れる。して見ると、今晩で当分お別れになる。但し明後日あさっては日曜だ。
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
この頃自分の感じている真佐子の女性美はだんだん超越ちょうえつした盛り上り方をして来て
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
心は光りの飛ぶごとくにあらゆる道理の中を駈巡かけめぐったが、何をとらえることも出来無かった。ただわずかに人の真心——まことというものの一切に超越ちょうえつして霊力れいりょくあるものということを思い得て
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
少くとも中学校の制服制帽にあこがれるといったような子供らしさは、すっかり超越ちょうえつしていた。そして入学後の生活というものに、ある真面目な期待をかけて、試験場にのぞんだのである。
次郎物語:02 第二部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
商人は商人、教師は教師、役人は役人とおのれのあずかっている職務に忠実ちゅうじつにして、なおかつ思想は高く俗界を超越ちょうえつして、商人が金を造っても金を目的とせず、農家が肥料ひりょうほどこしても収穫しゅうかく以上に目的を置き
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
日英米仏伊印独支にちえいべいふついいんどくし、八ヵ国の少年は、おのおのその国をことにし、人種を異にしておりますが、その共同精神、すなわち国籍や人種を超越ちょうえつした
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
「ベラン氏の申出は僕の常識を超越ちょうえつしている。とにかくベラン氏と僕とは関係がない」と僕はおどろきの程をちょっとらして
宇宙尖兵 (新字新仮名) / 海野十三(著)
従ってまた野菜も作れない、それだけに野菜の善悪を見る目は自他の別を超越ちょうえつする、公平の態度をとることが出来る、——つまり日本のことわざを使えば岡目八目おかめはちもくになるわけですね。
不思議な島 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そう叫んだ彼は、セオリーを超越ちょうえつして、梯子はしごを持ってきた。それから危い腰付でそれに上ると、天井へ手を伸ばした。蠅は何の苦もなくたちまち彼の指先に、とらえられた。
(新字新仮名) / 海野十三(著)
もっとも山井博士の信用だけは危険にひんしたのに違いない。が、博士は悠然ゆうぜんと葉巻の煙を輪に吹きながら、巧みに信用を恢復かいふくした。それは医学を超越ちょうえつする自然の神秘を力説したのである。
馬の脚 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
声はややびを帯びた底にほとんど筆舌を超越ちょうえつした哀切の情をこもらせている。とうてい他人の作った弔辞を読み上げているなどとは思われない。保吉はひそかに校長の俳優的才能に敬服した。
文章 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
それはじつに、ユークリッドの幾何学を超越ちょうえつ
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)