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訥弁
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とつべん
ふりがな文庫
“
訥弁
(
とつべん
)” の例文
旧字:
訥辯
声色
(
せいしょく
)
を励ますというような処は少しもない。それかと云って、評判に聞いている
雪嶺
(
せつれい
)
の演説のように
訥弁
(
とつべん
)
の能弁だというでもない。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
と同時にこんな張りのある
訥弁
(
とつべん
)
の
声
(
こわ
)
いろが、あとから耳許へ聞こえてきた、木の葉の合方、山嵐や谺の鳴物も聞こえてきた
小説 円朝
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
と
矢張
(
やっぱり
)
固くなりながら、
訥弁
(
とつべん
)
でポツリポツリと両親の
言伝
(
ことづて
)
を述べると、奥様は聴いているのか、いないのか、
上調子
(
うわちょうし
)
ではあはあと受けながら
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
元来僕は
訥弁
(
とつべん
)
で自分の思って居ることが云えない
性
(
たち
)
だから、英語などを訳しても分って
居乍
(
いなが
)
らそれを云うことが出来ない。
落第
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
自分の並み外れたしゃがれ声と
訥弁
(
とつべん
)
を
呪
(
のろ
)
いながら、身に覚えのないことだと証言したが、おさいは聞こうともしなかった。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
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しかし、彦太は、例の
訥弁
(
とつべん
)
で、師の前に坐ると堅くなってしまった。矢柄は、彼が近く御家人の跡目をついで、士格になるという事をおよそ聞くと
脚
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
これを何と形容したら適当であるか、例えばここに
饒舌
(
じょうぜつ
)
な空談者と
訥弁
(
とつべん
)
な思索者とを並べた時に後者から受ける印象が多少これに類しているかもしれない。
津田青楓君の画と南画の芸術的価値
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
僕のどもりと
訥弁
(
とつべん
)
とで、また大演説会というようなものに場所
馴
(
な
)
れない臆病さとで、果してそれがうまくやれるかどうか、僕は心中甚だそれを危ぶんでいた。
新秩序の創造:評論の評論
(新字新仮名)
/
大杉栄
(著)
しかし、おれのいじけた性質と
訥弁
(
とつべん
)
にたいする、彼のはなやかな性質と雄弁とは、おれを彼にたいして反抗を不可能ならしめて、つねに道化役者の地位においた。
蜘蛛
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
不鮮明な認識の流れはそのまま横に流して朦朧たらしめる
訥弁
(
とつべん
)
で、適度の要領ある次ぎの展開の緒を掴む鋭敏な探索力など、彼の政治力は数字と離れて成り立たないものだ。
夜の靴:――木人夜穿靴去、石女暁冠帽帰(指月禅師)
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
ケンプの演奏は素朴で純情で、そのくせ
燦爛
(
さんらん
)
としている。考えようでは、この人ほど無器用なピアニストはないが、この人ほど味の良いピアニストも少い。この人の指は、
訥弁
(
とつべん
)
の雄弁だ。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
いそがしい父の
小閑
(
ひま
)
を見ては
膝
(
ひざ
)
をすりあわせるようにして座りこんでいた。いつも
鉱山
(
やま
)
のことになると
訥弁
(
とつべん
)
が
能弁
(
のうべん
)
になる——というより、
対手
(
あいて
)
がどんなに困ろうが話をひっこませないのだ。
旧聞日本橋:08 木魚の顔
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
若し強ひて厳格な態度でも装はうとするや最後、其結果は唯対手をして一種の滑稽と軽量な
憐愍
(
れんびん
)
の情とを起させる丈だ。然し当人は無論一切御存じなし、破鐘の欠伸する様な
訥弁
(
とつべん
)
は一歩を進めた。
雲は天才である
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
エジプトの都会の
貧民窟
(
ひんみんくつ
)
で
喧噪
(
けんそう
)
と
怠惰
(
たいだ
)
の日々を送っている百万の同胞に向って、モオゼが、エジプト脱出の大理想を、『口重く舌重き』ひどい
訥弁
(
とつべん
)
で懸命に説いて廻ってかえって皆に迷惑がられ
惜別
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「演説ですか? 私は極く
訥弁
(
とつべん
)
ですが」
村の成功者
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
まだ
完成
(
まとまっ
)
ていなかろうがどうだろうがそんな事に
頓着
(
とんじゃく
)
はない、
訥弁
(
とつべん
)
ながらやたら無性に
陳
(
なら
)
べ立てて返答などは更に聞ていぬ。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
自分の並み外れたしゃがれ声と
訥弁
(
とつべん
)
を
呪
(
のろ
)
いながら、身に覚えのないことだと証言したが、おさいは聞こうともしなかった。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「
訥弁
(
とつべん
)
の雄弁」として一世に宣伝された通り、座談も決して、なめらかでない。講演の場合と同様に、ポツリ、ポツリと、ウサギの糞を思わせる。それが、実に、大変なおもしろさなのだ。
胡堂百話
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
エジプトの都会の奴隷の境涯に甘んじ貧民窟で
喧噪
(
けんそう
)
と怠惰の日々を送っている百万の同胞に、エジプト脱出の大事業を、「口重く舌重き」ひどい
訥弁
(
とつべん
)
で懸命に説いて廻ってかえって皆に迷惑がられ
風の便り
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
文士でも芸術家ないし芸人でも何か一つ腹に覚えのある人の講演には
訥弁
(
とつべん
)
雄弁の別なしに聞いていて何かしら親しみを感じ、底のほうに何かしら生きて動いているものを感じるから妙なものである。
柿の種
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
訥弁
(
とつべん
)
は、ときにより、雄弁にまさるものか。ついに松田重明も
私本太平記:05 世の辻の帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
倉なあこは仕掛をしながら、例のゆっくりした
訥弁
(
とつべん
)
で、以上のことを説明してくれたのだが、その説明が終るのを待っていたように、誰かが私に呼びかけた。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
倉なあこは仕掛をしながら、例のゆっくりした
訥弁
(
とつべん
)
で、以上のことを説明してくれたのだが、その説明が終るのを待っていたように、
誰
(
だれ
)
かが私に呼びかけた。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
訥
漢検1級
部首:⾔
11画
弁
常用漢字
小5
部首:⼶
5画
“訥”で始まる語句
訥々
訥升
訥子
訥
訥庵
訥朴
訥吃
訥辯