襟飾えりかざ)” の例文
テナルディエは襟飾えりかざりとしてるぼろ布を喉仏のどぼとけの所まで引き上げた。それは真剣になった様子を充分に示す身振りだった。そして言った。
蝙蝠傘屋こうもりがさやの前にもちょっと立ちどまった。西洋小間物こまものを売る店先では、礼帽シルクハットわきにかけてあった襟飾えりかざりに眼がついた。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
エリスは病をつとめてち、上襦袢うわじゅばんもきわめて白きをえらび、丁寧にしまいおきし「ゲエロック」という二列ぼたんの服を出して着せ、襟飾えりかざりさえ余がために手ずから結びつ。
舞姫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「まああなたは、今朝けさきれいな襟飾えりかざりをしていらっしゃるのね。ほんとにおしゃれだこと。いえ、数字でも私は退屈しませんわ。」
蝙蝠傘屋かうもりがさやまへにも一寸ちよつとまつた。西洋せいやう小間物こまもの店先みせさきでは、禮帽シルクハツトわきけてあつた襟飾えりかざりにいた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
気取った結び方をした襟飾えりかざり、ポケットの中にしのばした棍棒こんぼう、ボタンの穴にさした一輪の花、そういうのがこの人殺しの洒落者しゃれものの姿であった。
鈴木君は頭を美麗きれいに分けて、英国仕立のトウィードを着て、派手な襟飾えりかざりをして、胸に金鎖りさえピカつかせている体裁、どうしても苦沙弥くしゃみ君の旧友とは思えない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それから、マリユスにというよりもむしろその襟飾えりかざりにでも口をきいてるように目を下げて、半ば口の中で続けて言った。
自分じぶん毎日まいにちけてゐるのよりも大變たいへんがらかつたので、いて見樣みやうかとおもつて、半分はんぶんみせなか這入はいりかけたが、明日あしたから襟飾えりかざりなどをかへところくだらないことだとおもなほすと
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
彼はまたひどく煙草たばこが好きだった。それからことにちょっと手先でレースの襟飾えりかざりをちぢらすのに巧みだった。彼はあまり神を信じていなかった。
その次来た時には御納戸おなんどの結び目に、白いちょう刺繍ぬいとった襟飾えりかざりを、新聞紙にくるんだまま、もし御掛けなさるなら上げましょうと云って置いて行った。それを安野やすのが私に下さいと云って取って帰った。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
血のかたまりが襟飾えりかざりの結び目にたまっていた。シャツは傷口にはいり込み、上衣のラシャはなまなましい肉の大きな切れ目をじかにこすっていた。
彼らは襟飾えりかざりもなく、帽子もかぶらず、息を切らし、雨にぬれ、目を光らし、モルラン河岸からやってきた。ガヴローシュは平気で彼らに加わった。
ジャン・ヴァルジャンは元どおり襟飾えりかざりをつけ上衣を着ていた。壁越しに投げ込まれた帽子も見つけて拾ってきた。
襟飾えりかざりをつけていない金髪の青年が、各防寨の間を駆け回って命令を伝えていた。剣を抜き青い警官帽をかぶったもひとりの男は、方々に哨兵しょうへいを出していた。
それをコゼットの両腋りょうわきの下に身体を痛めないように注意して結わえ、海員たちが燕結つばめむすびと称する結び方でその襟飾えりかざりを綱の一端に結わえ、綱の他の一端を口にくわえ
隊の番号がついてる銃を持ってる者が多く、帽子をかぶってる者はごく少なく、襟飾えりかざりをしてる者はひとりもなく、たいてい皆腕をまくり、またやりを持ってる者もいた。
そしてまたその様子は! 襟飾えりかざりも、帽子も、上衣も着ていなさらない。知らない人だったら魂消たまげてしまいますよ。まあこの節は聖者たちも何と妙なことをなさることやら。