からかみ)” の例文
からかみを開けたも知らぬ。長火鉢につまづいたも知らぬ。真暗で誰のだか解らぬが、兎に角下駄らしいものを足に突懸けて、渠は戸外へ飛出した。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
僧「形は絵にいたようなものだ、朦朧ぼんやりとして判然はっきり其の形は見えず、只ぼうと障子やからかみへ映ったり、上の方だけ見えて下の方はけむのようで、どうも不気味なものじゃて」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
白ペンキ塗の厚縁あつぶち燦々きらきらで、脾弱ひよわい、すぐにもしわってはずれそうな障子やからかみしきりの、そこらの間毎まごとには膏薬のいきれがしたり、汗っぽい淫らな声がえかけたりしている。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
今度は楕円形なかげが横合から出て来て、煙の様に動いて、もと来た横へれて了ふ。ト、淡紅色のからかみがスイと開いて、真黒な髭面の菊池君が……
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
馬「へい、からかみ閉切たてきっていきれるからう枕元に立って立番をしているので、これから縁側へ整然ちゃんとお湯を持ってくんだ、何うです今夜はやくずつと極めましょう」
もう少し酒興が深めばいよいよ羽化登仙というところで、サラリと正面のからかみが開いて、コツコツと杖こそ突かぬが、ぬうと這入って来たは白髪白髯の老紳士とその老夫人であった。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
古い、暗い、大きい家、障子もからかみも破れ放題、壁の落ちた所には、漆黒まつくろに煤けた新聞紙を貼つてあつた。板敷にも畳にも、足触りの悪い程土埃ほこりがたまつてゐた。
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
髭むじゃの男の顔も、そそけ髪のみだらがましい女の顔も、むさくるしい二階の窓から好奇らしく私たちを眺めていた。それはたった一軒の旅館兼料理屋らしかった。からかみ染点しみまでが浅ましかった。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
とぴしゃりとからかみ閉切たてきります。
昨夜の事が歴々まざまざと思出された。女中がからかみを開けて髭面の菊池君が初めて顔を出した時のさまが、目に浮ぶ。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
主婦と其甥に当る十六の少年こどもと、三人の女児をんなのことが、此室に重なり合ふ様になつて寝て居るのだが、渠は慣れて居るから、其等の顔を踏付ける事もなく、壁側かべぎはを伝つて奥のからかみを開けた。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
お定は其処に膝をついて、開けたからかみに片手をかけた儘一時間許りも身動きをしなかつた。先づ明日の朝自分の為ねばならぬ事を胸に数へたが、お八重さんが今頃怎してる事かと、友の身が思はれる。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)