装飾かざり)” の例文
旧字:裝飾
ぜんの朋輩が二人、小野という例の友達が一人——これはことに朝から詰めかけて、部屋の装飾かざりや、今夜の料理の指揮さしずなどしてくれた。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
この現実の灰色の亜鉛トタン屋根ばかりの、それでいて尖った旧式の装飾かざり頭をつけた棟の連続、汽船の煤煙、薄ら寒い輝かぬ海港、雲の群れて曇った空
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
いづれも日に焼けて赤黒く、素足なり。或は襟に、或は手首に、或は髪に銀貨をつらねかけて装飾かざりとするは珍らし。極めて稀には金貨をかざれるもあり。
それと向かい合った床の間に武士を描いた二幅の画像が活けるがように掛けてあるのが装飾かざりといえば装飾である。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
座敷の装飾かざり、主人の風体、夜明けて見ても一廉の大商人が夫婦して、親にも勝る親切づく、お顔がさしてもなるまいと、店の方はしめ切つて、何商売と分らねど
移民学園 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
が、夕方になつて宿に帰ると、何一つ室を賑かにして見せる装飾かざりが無いので、割合に広く見える。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
世間を知らない青年教育者の口癖に言ふやうなことは、無用な人生の装飾かざりとしか思はなかつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
装飾かざりの整ったものではないが、張詰めた板敷に、どうにか足袋跣足はだし歩行あるかれる絨氈じゅうたんが敷いてあり、窓も西洋がかりで、一雨欲しそうな、色のややせた、緑の窓帷カアテンが絞ってある。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
二弦にげんの手軽なバラライカで、その音もゆかしい爪弾つまびきを聴きに集まる、胸や首筋くびすじの白い娘たちにめくばせをしたり、口笛を吹いたりする、あの二十歳はたち前後のおしゃれで剽軽ひょうきんな若者たちの装飾かざりでもあり
総じてへやの一体の装飾かざりが、く野暮な商人あきうどらしい好みで、その火鉢の前にはいつもでつぷりと肥つた、大きい頭の、痘痕面あばたづらの、大縞おほしま褞袍どてらを着た五十ばかりの中老漢ちゆうおやぢ趺坐あぐらをかいて坐つて居るので
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
彼女等の、胴衣と華車ちやち装飾かざりの下には
辺鄙へんぴの山の温泉の宿は、部屋の造作つくり装飾かざり以前むかしと変わらなかった。天井の雨漏りの跡さえそのままであった。
猿ヶ京片耳伝説 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
奥方は表向きのお装飾かざり物ばかり、内実はそのお方が、御同族方への御交際向きから、下々への行渡り、奥様同様のおきりもりを、あそばさねばならぬ訳でございますから。
誰が罪 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
而して俺一人が装飾かざりも何にもないガランとした下座敷にぼつねんとかうやつて坐つて居る。
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
この装飾かざりはどうだ! よく話半分といふけれど、何が半分どころか! これはどうだい! 何といふ素晴らしい欄干だらう! この細工はどうだ! この鉄材だけでも、五十ルーブリがものはつとるぞ!
さまざまの部屋の装飾かざりのうち、壁にかけてある織物が、とりわけ珍らしく立派であった。それには堂塔人物などが、きわめて古風に異国的に、色糸をもって刺繍ししゅうされてあった。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
さまざまの電気燈でんき装飾かざり
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
発掘用の道具などを、しつの片隅へ片付けてから、博士は静かに旅装を解き、それから室を見廻わした。非常に高いその天井。それが博士を喜ばせた。左右の壁は卵色で、これという何んの装飾かざりも無い。
木乃伊の耳飾 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
店々の装飾かざりまばらに
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)