衝動しょうどう)” の例文
失礼! が、ぼくはふき出したい衝動しょうどうのあとで、泣き出したいような気になりました。だって、このお嬢さん達は、きっと祖国を知らないんだ。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
私は今ここまで書いて来て、初代さんに私の手を差し伸べたい衝動しょうどうに強く動かされる。けれど、今はもう私ののべる手を受けてくれる手がない。
「なに、どこにも見当らないって」その報告をきいた大江山警部は、鈍間とんまな刑事をなぐりたおしたい衝動しょうどうられたのを、やっとのことで我慢した。
省線電車の射撃手 (新字新仮名) / 海野十三(著)
当の上野介がうけたかすり傷や恐怖以上に、あの時、大きな衝動しょうどうをうけたのは上杉家だった。またその磐石ばんじゃくの社稷をになっている老臣千坂兵部だった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
動物の神経だなんというものはただ本能と衝動しょうどうのためにあるです。神経なんというのはほんの少ししか働きません。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
まぶたに水の衝動しょうどうが少くなると小初は水中で眼を開いた。こどもの時分から一人娘を水泳の天才少女に仕立てるつもりの父親敬蔵は、かなり厳しいしつけ方をした。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
時計は容赦ようしゃなく三分、五分と進んで、もう十一時を過ぎてしまった。お祖母さんはやはり動かない。次郎は何かをその頭になげつけてやりたいような衝動しょうどうを感じた。
次郎物語:02 第二部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
雪之丞は、その時、不思議な衝動しょうどうに駆られて、じっと、広海屋をみつめて、しかし、さり気なく——
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
私は死の恐怖に眼を閉じて一途いちずに性の衝動しょうどうおもむくままに身をまかせた。夫も私の大胆さと無鉄砲さにあきれ、今にどうなるであろうかと案じながらも結局私に引きられて行った。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
久助君は、ねこのようにくるいたい衝動しょうどうが、からだの中にうずうずするのを感じた。
久助君の話 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
翌日、朝の五時ごろ、突きあげられるような衝動しょうどうを感じて眼をさました。吉之丞は
呂宋の壺 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
そのひっそりした稲妻、その遠慮えんりょがちのひらめきが、同じくわたしの身うちにもひらめいている無言のひそやかな衝動しょうどうに、ちょうど相応ずるもののように思われた。夜が明け始めた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
そしてそのための私のよろこばしさと言ったら、むかしの詩人等が野薔薇のために歌った詩句を、口ずさむなんと言うのではなく、それを知っているだけ残らず大きな声で呶鳴どなり散らしたいような衝動しょうどうにまで
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
なたか何かで斬り落してしまいたいような衝動しょうどうを感じるのですよ
偉大なる夢 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
高圧電気にふれたときのようなはげしい衝動しょうどうを感じると共に、全身にするどい痛みをおぼえた。それで僕は気がついた。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
内田さんや中村じょうのなかに交ってあなたの姿もみえたとき、ぼくは心が定らないままげだしたい衝動しょうどうにかられました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
むしろ宣和書院の一員と聞いたときは、むかと、つばでも吐きかけてやりたいような衝動しょうどうすらあった。
人間山水図巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、真智子の前で恥をかいている恭一の顔を、じっと見つめていたいような衝動しょうどうにかられた。しかし、いじめている二人に対しては、決して好感が持てなかった。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
小初は堅気かたぎな料理屋と知っていて、わざととぼけて貝原にいた。貝原は何の衝動しょうどうも見せず
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
柳営りゅうえい大奥の秘事にさえ通じているということを、お初の前で披瀝ひれきして、相手から尊敬を買いたいような衝動しょうどうに駆られたかのように、今は、つつしみを忘れて、しゃべりつづけるのだった。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
兵士等大将のエボレット勲章等を見て食せんとするの衝動しょうどうはなはだし。
饑餓陣営:一幕 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そのときの衝動しょうどうは強く、帰ってから直ぐ書きかけの原稿紙を全部、破ってしまいました。こんな興奮するようでは、だとても書けないとあきらめたからです。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
ほかにも、同じ鈴鹿すずか郡の峰ノ城代岡本重政がやはり睨まれていたし、かたがた神戸信孝の岐阜失陥しっかんにも衝動しょうどうされて、同国の形勢は、とみに騒然たるものがあったらしい。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私たちの体は、なんの衝動しょうどうも感じなかったけれど、深度計しんどけいの指針は、ぐんぐん右へ廻りだした。
地球要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
これが御着城に聞え出した日から、小寺政職以下、すわというような衝動しょうどうをあらわしていた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ゴンゴラ総指揮官は、飛行機にのって特殊飛行をやってみたい衝動しょうどうられて、弱った。
私は大きい衝動しょうどうにたえきれないで、恐ろしい現場げんばを前に、あらゆる知覚ちかくを失ってしまいました。暗い世界に落ちてゆくような気がしたのが最後で、なにもかもわからなくなったのです。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)