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蟄伏
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ちっぷく
ふりがな文庫
“
蟄伏
(
ちっぷく
)” の例文
未開地の東国武者と頼朝の
蟄伏
(
ちっぷく
)
時代。——鞍馬脱出の牛若の放浪期。——諸国の反平家機運による騒乱の頻発と京師物騒の暗黒前夜期。
随筆 新平家
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
別に
主取
(
しゅうど
)
りもせず従来の本領に
蟄伏
(
ちっぷく
)
している武士の数が、やはり浪人の数くらい、事によるとそれよりも多くあったのである。
名字の話
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
穴蜘蛛のように土幕にばかり
蟄伏
(
ちっぷく
)
していた
徳一
(
ドクイル
)
老人が、今夜はよくも這い出して来て今までがみがみ喚き散らした所だった。
土城廊
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
かくのごとく
数多
(
あまた
)
の才俊豪傑をして
餓吻
(
がふん
)
を鳴らさしめ、数多の憂世慨時の人物をば
草莽
(
そうもう
)
に
蟄伏
(
ちっぷく
)
せしめ、その領内の百姓の肝脳をば絞りたるか。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
湖水の西の
淵
(
ふち
)
には九つの頭を有する悪龍が棲んでいて、土地の少女を其の
生贄
(
いけにえ
)
として取り
啖
(
くら
)
っていたが、満巻上人の
神呪
(
しんじゅ
)
によってさすがの悪龍も永く
蟄伏
(
ちっぷく
)
し
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
▼ もっと見る
即ち
醜体
(
しゅうたい
)
百戯、芸妓と共に歌舞伎をも見物し小歌浄瑠璃をも聴き、
酔余
(
すいよ
)
或は花を弄ぶなど
淫
(
ウカ
)
れに淫れながら、内の婦人は必ず女大学の範囲中に
蟄伏
(
ちっぷく
)
して独り静に留守を守るならんと
女大学評論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
鶴見が
壺中
(
こちゅう
)
の
天地
(
てんち
)
なぞというのはこんなものかと思っているうちに、夢が青い空気のなかから
搾
(
しぼ
)
りだされる。虚無の油である。それがまた
蟄伏
(
ちっぷく
)
していたくちなわのうごめきを思わせる。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
風邪も
蟄伏
(
ちっぷく
)
した真夏の今日までそんな物を貼っておく家はまず一戸もなかった。
釘抜藤吉捕物覚書:03 三つの足跡
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
市川
升之丞
(
ますのじょう
)
の名を取り上げられ、九代目団十郎から破門され、また岩井粂八の名にかえって、
暫
(
しばら
)
く
蟄伏
(
ちっぷく
)
しなければならなかった、嫌な思出と、若かった日のことなども、それからそれへと
市川九女八
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
蟄伏
(
ちっぷく
)
してる熊や血を吸いきった
蛭
(
ひる
)
のように、圧倒し来る睡魔に襲われていた。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
三昼夜麻畑の中に
蟄伏
(
ちっぷく
)
して、一たびその身に会せんため、一
粒
(
りゅう
)
の
飯
(
いい
)
をだに口にせで、かえりて湿虫の
餌
(
えば
)
となれる、意中の人の窮苦には、泰山といえども動かで
止
(
や
)
むべき、お通は
転倒
(
てんどう
)
したるなり。
琵琶伝
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そこの
穴馬在
(
あなうまざい
)
では、数年の間、
蟄伏
(
ちっぷく
)
したまま、素姓の知れない一牢人として、百姓の子に読書習字など教えて細々に暮していた。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いわんや
草莽
(
そうもう
)
の中に
蟄伏
(
ちっぷく
)
し、
超世
(
ちょうせい
)
の奇才を
懐
(
いだ
)
き、雄気
勃々
(
ぼつぼつ
)
として禁ずる能わざるものにおいてをや。いわゆる智略人に絶つ、独り身なきを
患
(
うれ
)
う。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
世間的に美妙が
蟄伏
(
ちっぷく
)
していた時には、心ならずも彼女たちも
矛
(
ほこ
)
を伏せていた、おかあさんとおばあさんは、美妙の復活を見ると、あの輝かしかった天才息子を、大切な孫を、
嫁女
(
よめじょ
)
が奪ってしまって
田沢稲船
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
まだ時をえない源氏党が
蟄伏
(
ちっぷく
)
していたそれらの山村の武蔵野の果ての部落を行くと、何か、強すぎるほどな野性が今でも匂う。
随筆 新平家
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
越前の
穴馬
(
あなうま
)
には、六年間ほど、郷士として
蟄伏
(
ちっぷく
)
しておられた。その間に光秀様はわしを連れ、諸国を武者修行に歩いては、また、穴馬へ帰っていた。
茶漬三略
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
時政も、遂に、妥協してそう云い出したので、何分にも
蟄伏
(
ちっぷく
)
している退屈にたえない頼朝は、その夜のうち仮住居の寺院を立って、安房から上総路へ向った。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
園阿
(
えんあ
)
は、彼の人物を愛してか、非常によく面倒をみてくれた。称念寺の門前に、一軒借りて、光秀はまたしばらくここでも寺子屋の先生として、
蟄伏
(
ちっぷく
)
していた。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
世阿弥が
柵
(
さく
)
を出て、石子牢にいる一八郎と話をまじえたなどということは、山
詰
(
づめ
)
の役人、誰一人として気がつかなかったが、永らく
蟄伏
(
ちっぷく
)
していた世阿弥の心は、その日から
鳴門秘帖:03 木曾の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
渭水
(
いすい
)
を挟んで大会戦が行われていると途中で聞き、万一大事な兵糧を敵方に奪われてはと存じ、わざと山中に
蟄伏
(
ちっぷく
)
して、戦いのを終るのを待って再び出かけました。そんなわけでありまして」
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
汝の皮膚は決して山野に
蟄伏
(
ちっぷく
)
して雨を
凌
(
しの
)
いできたものでなく、酒の
脂
(
あぶら
)
に
弛
(
ゆる
)
んでいる。すでに運輸に罰則あり、三日
誤
(
あやま
)
れば徒罪に処し、五日誤れば斬罪を加うべしとは、かねて明示してある通りだ。
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いま、この長州屋敷には、長藩以外の浪士も、何十人か
蟄伏
(
ちっぷく
)
している。すでに禁門衛兵として、また京都守護職として、会津の前駆が乗りこんで来ている折でもあるので、門鑑は厳重をきわめていた。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
蟄
漢検1級
部首:⾍
17画
伏
常用漢字
中学
部首:⼈
6画
“蟄伏”で始まる語句
蟄伏期