蛤鍋はまなべ)” の例文
蛤鍋はまなべかなんかをつつきながら、しきりと女に酌をとらせていたものでしたから、右門は大声に叱咜しったすると、まずその荒肝をひしぎました。
その天麩羅屋てんぷらやの、しかも蛤鍋はまなべ三錢さんせんふのをねらつて、小栗をぐり柳川やながは徳田とくだわたし……宙外君ちうぐわいくんくははつて、大擧たいきよして押上おしあがつた、春寒はるさむ午後ごごである。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
馬道へ出ると一流の料理屋富士屋があり、もっと先へ出ると田町たまちとなって、此所は朝帰りの客を蛤鍋はまなべの店が並んでいる。
会合の場所は馬橋まばしのYの家だということだった。寒い夜だった。修造のために蛤鍋はまなべの用意をして、茂緒は待っていた。いつまでたっても、修造は帰ってこなかった。
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
見透みすかしても旦那の前は庇護かぼうてくるるであろう、おお朝飯がまだらしい、三や何でもよいほどに御膳ごぜん其方そちへこしらえよ、湯豆腐に蛤鍋はまなべとは行かぬが新漬に煮豆でも構わぬわのう
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
娑婆しゃばの夜景にのびのびとして、雪踏せったを軽く擦りながら町の軒並を歩きますに、茶屋の赤い灯、田楽でんがく屋のうちわの音、蛤鍋はまなべ鰻屋うなぎやの薄煙り、声色屋こわいろや拍子木ひょうしぎや影絵のドラなど、目に鼻に耳に
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
先生せんせい……(みづ)……」「なに。」「蛤鍋はまなべへおともは如何いかゞで。」「馬鹿ばかへ。」「いゝえ、大分だいぶ女中ねえさんがこがれてりますさうでございまして。」かたはらから
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「でも、蛤鍋はまなべかなんかでやにさがっていたあたりは、あんまり命が縮まったとも思えないではないか」
見透かしても旦那の前は庇護かばふて呉るゝであらう、おゝ朝飯がまだらしい、三や何でもよいほどに御膳を其方へこしらへよ、湯豆腐に蛤鍋はまなべとは行かぬが新漬に煮豆でも構はぬはのう
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
辰巳たつみかたには、ばかなべ蛤鍋はまなべなどと逸物いちもつ一類いちるゐがあるとく。が、一向いつかう場所ばしよ方角はうがくわからない。
湯どうふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)