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著
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いちゞ
尤も其日は大変な
好い天気で、広い芝生の
上にフロツクで立つてゐると、もう
夏が
来たといふ感じが、
肩から
脊中へ掛けて
著るしく
起つた位、
空が
真蒼に
透き
通つてゐた。
抑も
辻行灯廃れて
電気灯の
光明赫灼として
闇夜なき
明治の
小説が
社会に於ける
影響は
如何。『
戯作』と云へる
襤褸を
脱ぎ『
文学』といふ
冠着けしだけにても其
効果の
著るしく
大なるは
知らる。
手水鉢の
蔭に
生えた秋海棠の葉が
著るしく大きくなつた。
梅雨は漸く晴れて、昼は
雲の
峰の世界となつた。強い
日は大きな
空を
透き
通す程焼いて、
空一杯の熱を地上に射り付ける天気となつた。