けい)” の例文
旧字:
空は、チチチチとさえずりに明けかけている。その澄みきった浅黄いろの大気の下に、草心尼の姿が一けいの野の花みたいに弱々と見えた。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
温故之栞おんこのしおり』(巻十)にはこの国の水田生産のことを記して、以前は割竹五六本を木の台に立てつらね、稲を七八けいずつはさんでいた故に
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
が、子に取っては、彼の画題となる一けいの草花に現われている、自然の美しさほどの、刺戟も持っていなかった。時代が違ってい、人間が違っていた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
その室の鏡の枠の模様には一けいの蔓にまつたく故人の空想から出来た奇抜な雑多の花と葉と実とが生じて居た。壁には大きな向日葵ひまはりの花の中から黒牛くろうしが頭を出して居る絵もあつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
さて翌年の十月鶴二羽かの農人のうにんが家のにはちかくまひくだり、稲二けいおとし一こゑづゝなきて飛さりけり。主人あるじひろひとりて見るにそのたけ六尺にあまり、も是につれて長く、の一えだに稲四五百粒あり。
僕の所業を知った父は「せっかくのらんを抜かれた」と何度も母にこぼしていた。が、格別、そのためにしかられたという記憶は持っていない。蘭はどこでも石の間に特に一、二けい植えたものだった。
追憶 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
あわれしる蒲公たんぽぽけいみじこうして乳をあませり
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
見ると、榛の木蔭には、一けいの秋草みたいに、被衣かつぎした一人の女房がたたずんでいた。じっと、こなたを見まもっている姿から、声なき声が、俊基の胸をついて来た。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さて翌年の十月鶴二羽かの農人のうにんが家のにはちかくまひくだり、稲二けいおとし一こゑづゝなきて飛さりけり。主人あるじひろひとりて見るにそのたけ六尺にあまり、も是につれて長く、の一えだに稲四五百粒あり。
藤吉郎は、一けい蛍草ほたるぐさんで、指先にもてあそんでいた。花に寄せて、誰をしのんでいるのだろうか。母か、寧子ねねか。——彼の多感多情は、彼の軍師竹中半兵衛が、誰よりもよく知っていた。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)